「……?と、言うと?宇宙くん」
「何と言いますか……どんな言動でも陽があれば陰も存在しているんじゃないかな、と」
「?」
「例えば、グループ内でさりげない会話で『君の言葉は障害者みたいだ』と言ったとする。そうすると、発言した人はその場で一目置かれますよね」
「まぁ、そうだな。内容は品がないがな」
「猿堂さんの言う通り、発言は褒められたものじゃない……。でも、」
「でも?」
「そこにどう反応するかで、人間の深さが見えてしまうことになるんですよ」
「ーーッ!」
「そこで生まれるのが二択なんですよね。まず、発言者は大きく言ったことに優越感に浸ることができる」
「………まぁ、本人に嫌味を言えてスッキリしたからな」
「そして、素直に受け止めた単細胞は〈この人、堂々と言って凄い!〉、〈はっきり言ってカッコイイ〉など崇拝したり、自分にできないことを尊敬する輩が出てくる」
「それが、陽ということか……」
「ええ。内容は人として下品ですがね。逆に陰は、別の視点を見た者……まぁ、頭の回転が速い人からしてみたら、相手に対しての信頼の低下、器量の小ささを知ることができたということ」
「そうだな……どうでもいい相手にする対応はそいつの”本性”って昔から言うしな。自分に利益の無い野郎に気を使っても意味はないからな」
「あと、他人を利用しないと自分をアピールできないというレッテルを貼られるとかですね。まぁ……簡単にいうと、」
「どんな言動にも……”これまでの生き様の器が試されている”ってことか?」
その言葉を小さく呟くと、次男坊はニッと口元に弧を描く。
「そう、その通りなんですよ、猿堂当主。それは一部になりますが。行動も同じだと思いますよ?自分にしか利益がない行動でも、巡りに巡ってどこかで他人が救われているとか」
「………………」
「それらをひっくるめると”人生は表裏一体”。それを踏まえて人生は自己責任ということなんだと最近知りましたね」
「なるほど………君の言いたいことは分かった。で?」
「………で?、とは?」
「その人生は表裏一体と俺が出した情報料金は、どう繋がってんだ?」
そう質問をすると、目の前の次男坊は深いため息を吐き出した。しかも、片手でおでこを押さえて、まるで頭が痛いと言わんばかりのポーズでだ。
「あのですね………猿堂さん」
「な、なんだよ………?」
「こんなことを他の当主に言うの失礼なの承知ですけど」
「言いたい事あるなら遠慮なく言ってくれていいぜ。それも当主の務めだからNA」
「それでは遠慮なく、」
「おう!かまわないZE!!」
「真面目な話………バカなんですか?」
「………HA?」
有り得ない返答に思わず素がでてしまった。そりゃそうだろう!一族の長であり、管理者である当主に対しての暴言を吐かれたのだ。ましてや、他の一族から。
「いや……だって、そうでしょ?人生は表裏一体はあくまで、〈人生は自己責任〉の例え話の一部であって。本題では無いんですよ」
「そ、それだったら、自己責任だけで言えば良いだろ!!」
「今までのアンタとの会話から分析したオツムの小ささに合わせて、この僕がゴリラでもチンパンジーでも分かるように説明してやったんですよ。逆に礼を言ってくるのが筋だと思いますよ!?」
「お、お前………風羅ちゃんの兄だからって言いたい放題言いやがって………!!」
「それに、僕は金額に見合う情報提供をしたまでです!そもそも、情報提供の相場って知ってます?一般的には安くて数万円からが当たり前ですからね」
「━━しょうがねぇだろ!持ち合わせが無いんだからよ!!それだったら、ツケにしてくれたって……」
「貴方と僕は、そんな間柄じゃないので」
「いやいやいや……お前のところの弟を世話をした恩人だぞ!俺は」
「あ、あと三年前にアホの嵐と飲酒した時に半壊させた神龍時家の自宅の慰謝料を早く払ってくださいよ。主に被害にあったのは風羅の部屋ですから」
「なんだって!!風羅ちゃんの部屋が半壊ッ!?それなら、責任を持って俺が使用している部屋を一緒に使ってもらっても…」
「大丈夫ですよ、それは。今は都内で彼氏と同棲していますから」
「え……………か、れし………だと?」
「それに、酔っぱらって能力を誤爆し自宅を半壊したパチンカスと一緒に住みたいと思わないでしょ……普通」
「………………」
ここで、俺の脳内でゴングの鐘が鳴り響き渡った。大した情報を貰えねぇまま……終わった。完膚なきまでに。
俺に残ったのは、中身の無いポールマミスのブランド財布に一枚のクレジットカードのみ。
(家に帰宅したら、ヤケ酒コースだNA………。ごめんよ、風羅ちゃん。俺の稼ぎが不甲斐なくて……)