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第4話 幸せな結婚生活

3ヶ月後、エリアナとルシアンの結婚式が盛大に執り行われた


両国から多くの貴族や民衆が参列し、2つの王国の結びつきを祝福した


純白のウェディングドレスに身を包んだエリアナの美しさは、参列者全員を魅了し、ルシアンもまた王子らしい気品に満ちていた


「愛する人よ、どんな困難があっても、君を守り抜くことを誓う」


「私も、あなたと共に歩み、両国の平和と繁栄のために尽くすことを誓います」


教会での誓いの言葉は、2人の心からの想いだった


政略結婚として始まった縁談が、真実の愛に基づく結婚となったのだ


結婚後、ルシアンはアルテリア王国のエリアナの屋敷で生活することになった


これは両国の取り決めによるもので、アルテリア王国での影響力を高めるという政治的意味合いもあった


しかし、夫婦2人にとっては、愛の巣を築く大切な場所だった


「エリアナ、この屋敷は本当に美しいね・・・君のセンスが随所に表れている」


「ありがとう・・・でも、今はあなたの家でもあるのよ、一緒に素敵な家庭を築きましょう」


2人は仲睦まじく新婚生活を始めた


朝は一緒に庭を散歩し、昼は政務や慈善活動に励み、夜は読書や音楽を楽しんだ


エリアナは料理を覚え、ルシアンは彼女のために詩を書いた


「今日の料理は格別だったよ」


「本当に?まだまだ練習が必要だと思うけれど」


「君が作ってくれたというだけで、どんな料理も美味しいんだ」


ルシアンの優しい言葉に、エリアナは幸せを感じていた


政略結婚でありながら、これほど愛し合える夫婦になれるとは思わなかった


しかし、その幸せな日々を冷ややかな目で見つめている人物がいた


アレクサンダー王子だった


彼は表面上、妹の結婚を祝福していたが、内心では強い警戒心を抱いていた


アレクサンダーが設立した諜報機関は、既にセレスティア王国について重要な情報を入手していた


そこで明らかになったのは、セレスティア王国の真の狙いだった


「殿下、重要な報告があります」


信頼できる部下の1人、カール大尉が密かに報告に来た


「何が分かった?」


「セレスティア王国では、この結婚を利用してアルテリア王国を支配下に置く計画が進められています・・・ルシアン王子は、その計画の重要な駒として送り込まれたようです」


アレクサンダーの表情が厳しくなった・・・


妹を愛する夫だと思っていた男が、実は侵略者の先兵だったとは・・・


「詳しく聞かせてくれ」


「セレスティア王国の国王と王太子は、アルテリア王国の富を狙っています。軍事力では劣るが、経済的に豊かなアルテリア王国を手に入れることで、地域の覇権を確立しようとしているのです」


「ルシアン王子の役割は?」


「王子は、アルテリア王国の重要人物に接近し、彼らを懐柔することです・・・そして最終的には、内部から王国を乗っ取る手筈になっています」


アレクサンダーは拳を握りしめた


愛する妹が利用されているのだ


しかし、エリアナは夫を心から愛している。この真実を告げることは、妹の心を深く傷つけることになる


「父上は、ルシアン王子を完全に信用している、この報告を信じてくれるだろうか?」


「国王陛下は確かに人を信じやすいお方です、それがこの国の良いところでもありますが、今回は危険かもしれません」


アレクサンダーは深く考え込んだ・・・


父王マクシミリアンは確かに人を信じやすい性格だった


それは偉大な王としての美徳でもあったが、時として国を危険にさらすこともあった


「分かった、引き続き調査を続けてくれ・・・そして、ルシアン王子の行動を密かに監視するんだ」


「承知いたしました」


その頃、エリアナとルシアンは幸せな時間を過ごしていた


しかし、ルシアンの心には重い秘密があった


彼は確かにエリアナを愛していたが、同時に自国の命令も背負っていたのだ


(エリアナ、君を愛しているからこそ、この任務が辛い・・・でも、僕にはセレスティア王国の王子としての義務がある)


ルシアンは毎晩、この葛藤に苦しんでいた


愛する妻を裏切ることになる任務と、王子としての責任の間で揺れ動いていた


ある日、エリアナは夫の様子がおかしいことに気づいた


「ルシアン、最近何か悩み事があるの?」


「いや、何でもないよ・・・少し疲れているだけだ」


「私に話せないことなら、無理に聞かないわ・・・でも、何か困ったことがあったら、いつでも相談してちょうだい」


エリアナの優しさが、ルシアンの心をさらに苦しめた


こんなに純粋で愛情深い女性を騙すことになるのかと思うと、胸が痛んだ


一方、アレクサンダーの監視は続いていた


彼はルシアンが密かにセレスティア王国と連絡を取っていることを確認し、また、アルテリア王国の重要人物たちとの会合を重ねていることも把握していた


「やはり、計画は着々と進んでいるようだな」


アレクサンダーは妹の幸せを守るため、そして国を守るために行動を起こす決意を固めた


しかし、直接的な対決は避け、まずは証拠を集めることにした


愛と疑念、忠誠と裏切りが錯綜する中、アルテリア王国には暗雲が立ち込めていた


幸せに見える新婚夫婦の周りで、大きな陰謀が静かに進行していたのである

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