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第6話 離婚の圧力

それから数ヶ月後、アレクサンダーの懸念は現実のものとなった


セレスティア王国から突然の使者が到着し、思いもよらない要求を突きつけてきたのだ


「エリアナ王女とルシアン王子の結婚を解消していただきたい」


セレスティア王国の大使、ヴィクター伯爵の言葉に、謁見の間は静まり返った


「何と言われた?」


マクシミリアン国王は信じられない思いで問い返した


「我が国は、アルテリア王国との経済協力が期待通りに進んでいないことを深く憂慮しております・・・これは、両国の政治的結びつきに問題があることを示しており、残念ながら王女殿下と我が国の王子との結婚を継続することは適切ではないと判断いたします」


ヴィクター伯爵の説明は表面的なものだったが、その真意は明らかだった


セレスティア王国の計画が思うように進まないため、より直接的な手段に出ようとしているのだ


「しかし、エリアナとルシアン王子は愛し合っている。何の問題もない結婚生活を送っているではないか」


王妃イザベラが抗議した


「それは承知しております。しかし、国家間の関係は個人の感情を超えた重要な問題です、我が国王の意向は固く、変更の余地はございません」


その時、エリアナが立ち上がった


「私は、その要求を拒否いたします」


「エリアナ王女殿下・・・」


「私とルシアンは、愛し合って結婚いたしました・・・そして今も愛し合っています、誰にも、私たちの絆を断ち切ることはできません」


エリアナの毅然とした態度に、ヴィクター伯爵は困惑した


「王女殿下のお気持ちは理解いたします。しかし、これは国家の決定事項です・・・ルシアン王子も、祖国の決定に従うべきです」


その時、ルシアン自身が口を開いた


「申し訳ございませんが、ヴィクター伯爵・・・私は妻エリアナと離婚するつもりはありません」


「王子殿下、何を仰っているのですか!!!これは陛下の直接の命令です」


「私の父上が横暴な命令を下したとしても、私は従うことはできません!!!私はもはや、セレスティア王国の王子である前に、エリアナの夫であり、アルテリア王国の一員なのです」


ルシアンの宣言に、アレクサンダーは内心で安堵した。妹の夫は、本当にこの国を選んだのだ


しかし、ヴィクター伯爵の次の言葉は、その場にいる全員に戦慄を与えた。


「非常に残念ですが、平和的な解決が不可能であれば、我が国には他の選択肢があります・・・アルテリア王国が我が国の合理的な要求を拒否するのであれば、それは両国関係の破綻を意味します」


明らかな戦争の脅しだった・・・


マクシミリアン国王は、愛する娘の幸せと国の安全の間で苦悩した


「ヴィクター伯爵、もう少し時間をいただけないだろうか。重要な決定には、十分な検討が必要だ」


「承知いたします・・・1週間後に、再度お答えをお聞きします」


使者が去った後、王室は緊急会議を開いた


「父上、私は絶対に離婚いたしません」


エリアナの決意は固かった。


「エリアナ、そなたの気持ちは痛いほど分かる・・・だが、国民の命も考えなければならない」


国王は苦悩していた・・・


1人の娘の幸せと、多くの国民の安全を天秤にかけなければならない状況に置かれていた


「陛下、私も妻との離婚は断固拒否いたします・・・たとえ祖国と戦うことになっても、私はエリアナと、そしてこの国と共にあります」


ルシアンの言葉に、王妃イザベラは涙を流した


その時、アレクサンダーが立ち上がった。


「父上、母上、エリアナ、そしてルシアン・・・皆の話を聞いていて、一つ確信したことがある」


全員がアレクサンダーに注目した


「我々は、セレスティア王国の脅しに屈してはならない・・・そして、エリアナとルシアンの結婚は守らなければならない」


「だが、息子よ・・・相手の軍事力は我が国を上回っている」


「確かにそうです、父上・・・しかし、我々には彼らにない物がある」


「それは何だ?」


「正義と、国民の支持です!!!そして、十分な準備時間もありました」


アレクサンダーは、これまで秘密裏に進めてきた準備について説明し始めた


「実は、セレスティア王国の脅威を予測して、密かに軍備の増強と、防御戦略の立案を進めてきました・・・また、セレスティア王国内部の情報も収集しています」


「内部の情報?」


「はい。ルシアンの協力もあって、敵国の弱点を把握することができました・・・セレスティア王国は、表面上は強大に見えますが、内部には多くの問題を抱えています」


アレクサンダーは、調査で得られた情報を詳しく説明した


セレスティア王国では、王の苛政により国民の不満が高まっており、貴族間の権力争いも激化していること


また、軍の士気も低下していることなどを報告した


「もし戦争になった場合、我々に勝算はあります・・・そして、ルシアンが我々の側に立つことで、敵軍の一部を寝返らせることも可能でしょう」


ルシアンは頷いた


「私の存在により、セレスティア王国軍の兵士たちに動揺を与えることができるかもしれません・・・多くの兵士は、王室の内紛を嫌っているからです」


マクシミリアン国王は、息子の用意周到さと、ルシアンの決意に感動した


「分かった!!!我々はセレスティア王国の要求を拒否する、エリアナとルシアンの結婚は守り抜く」


「ありがとうございます、父上」


エリアナは涙を流しながら父に感謝した


しかし、その決定が戦争を意味することを、全員が理解していた


愛を守るために、彼らは大きな代償を払う覚悟を決めたのだった


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