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第7話 戦争の始まり

1週間後、アルテリア王国の返答を聞いたセレスティア王国は、即座に軍事行動に移った


国境沿いの要塞都市フォートランドに、大軍が集結しているとの報告が入った


「ついに来たか」


アレクサンダーは冷静に状況を分析していた


彼の予想通り、セレスティア王国は外交的解決を放棄し、武力による併合を選択したのだ


「殿下、敵軍の規模は約3万。我が軍は2万程度です」


カール大尉からの報告に、軍議の参加者たちは緊張した


数的劣勢は明らかだった


「しかし、我々には地の利がある、そして、敵軍には内部分裂の要因もある」


アレクサンダーは、これまでの準備について説明した


国境の要塞は既に強化されており、補給線も確保されていた


さらに、民兵組織も編成されており、正規軍を支援する体制が整っていた


「ルシアン、君に頼みたいことがある」


「何でしょうか?」


「戦場で君の存在を示すことで、敵軍に動揺を与えたい・・・危険な任務になるが、引き受けてもらえるか?」


ルシアンは迷いなく答えた


「もちろんです・・・私は今、アルテリア王国の兵士として戦います」


エリアナは夫の決意を聞いて、不安に駆られた


「ルシアン、あなたが戦場に出るなんて・・・」


「エリアナ、僕は君を守るために戦うんだ。そして、この美しい国を守るために」


「でも、危険すぎます」


「確かに危険だ・・・しかし、今戦わなければ、我々の未来はない」


アレクサンダーが妹に向かって言った


「エリアナ、ルシアンの決意を尊重してやってくれ・・・そして、俺たちを信じてくれ」


戦争準備が急ピッチで進められる中、エリアナは夫との最後の夜を大切に過ごした


「ルシアン、必ず帰ってきて」


「約束するよ、エリアナ・・・君のために、必ず生きて帰る」


翌朝、アルテリア王国軍は国境へ向けて出発した


アレクサンダーが総司令官を務め、ルシアンは特別部隊の一員として従軍した


一方、エリアナは王宮に残り、負傷兵の治療や民間人の避難支援に当たった


戦争の不安に怯える国民を励ますことも、王女としての重要な役割だった


「王女様、前線からの報告です」


数日後、最初の戦闘の報告が届いた


「セレスティア王国軍が国境の要塞を攻撃しましたが、我が軍は持ちこたえています・・・しかし、敵軍は物量で圧倒してきており、長期戦は不利な状況です」


エリアナは戦況を聞いて、胸が締め付けられる思いだった


夫と兄が危険な戦場にいることを思うと、居ても立ってもいられなかった


その頃、前線では激しい攻防戦が続いていた


セレスティア王国軍は波状攻撃を仕掛けてきたが、アルテリア王国軍の頑強な抵抗に遭って、思うように進軍できずにいた


「アレクサンダー殿下、敵軍の士気は予想以上に高いようです」


「ああ、彼らも必死なのだろう・・・しかし、我々も負けるわけにはいかない」


アレクサンダーは前線を回り、兵士たちを激励していた


その時、ルシアンが重要な提案をした。


「殿下、敵軍の背後を突く作戦はいかがでしょうか?」


「背後を突く?」


「はい。私の知識を活かして、少数精鋭で敵国内部に侵入し、補給線を断つのです。正面からの攻撃だけでは、いずれ我々が不利になります」


アレクサンダーは、義弟の提案を真剣に検討した


確かに、正面からの消耗戦では最終的に負ける可能性が高かった


「危険な作戦だが、効果は大きいだろう・・・しかし、君がセレスティア王国内に入ることは、特に危険だ」


「それでも、やる価値はあります・・・私なら、敵国の地理や軍事施設の位置を正確に把握しています」


アレクサンダーは決断した


「分かった・・・君と俺、そして選抜された兵士300名で背後を突く、カール大尉には要塞の守備を任せる」


こうして、運命を左右する奇襲作戦が始まることになった


愛する妻を故郷に残し、ルシアンは生まれ育った国を敵として戦う決意を固めた


戦争は新たな局面を迎えようとしていた


そして、この戦いの結果が、エリアナとルシアンの愛の運命、そして両国の未来を決定することになるのだった


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