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第5話 言葉の向こう側

壁が、音もなく横に滑っていく。廃墟の奥に現れたのは、ほんの一畳の狭い部屋に繋がる門だった。中には何もない。辺り一面真っ白でまるで空間そのものが空白でできているようだった。翔太がその空間に一歩踏み出すと全ての音が消えた。風の音も、木々のゆらめく音も、鳥の鳴き声でさえ、全てが沈黙した。まるで現実世界の音が全て消えてしまったかのように。翔太はそのたった一畳ほどの空間の中で何か次の暗号がないかを探す。すると壁に何かが彫られているのを見つけた。三重の円とその中に浮かぶ四文字。


「ΛΟΓΟ」


「・・・ロゴス?」


ロゴス、ギリシャ語で「言葉」「理性」「原理」を意味する言葉。だがこの記号を見た瞬間、翔太の頭の中に何か注ぎ込まれた。


「なんだこれ・・・今までの音でも意味でもない。また別の何かだ。」


まるで自分の世界が歪んでズレたような。壁が文字でできているように見えた。いや、見えたのではない。感じたのだ。

木の模様、埃の動き、空間の深度。全てが情報の粒として存在している。


《見えていたものは、読まれていたものだ》


僕の頭の中にその言葉がひたすら流れた。


「これが・・・言葉の・・・外側?」


そう口にした時、言葉そのものが崩れ始めた。

思考の言語が意味を失う。代わりにこれまでの自分の記憶と感覚が混ざり合い、脳の中で新たな構造を作る。新たな暗号が浮かび上がる。今度は文字ですらなかった。形でもなく、音でもなく、「概念の連なり」だった。その瞬間、翔太の瞳に白い光が差し込んだ。空間が折り曲がる。まるで紙をめくるかのように。現実という概念がなくなり翔太の前にもう一つの世界が開いた。

そこにはその世界の地図があった。現実とは異なる構造の地図。目に見えないものを感じ取ることのできる人間しか見えない都市。そしてその中心に記された一つの名。


「沈黙の図書館」


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あとがき

どうもSEVENRIGHTです。

ついに翔太は未知の世界に入り込んでしまった。現実世界ではあり得ない良さがあると思います。


ぜひコメントといいねをよろしくお願いします🙏

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