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第7話 言語の起源

沈黙の図書館は静けさでは言い切れないぐらいの沈黙に満ちていた。全ての音がないため、翔太が歩くたびに足音すら存在しない。全ての音がないと言ったが音が吸われているのではなく実際は、そもそもこの世界に音という概念は存在しないのだ。書架の奥を抜け、さらに奥へ進むと空気が変わった。そして彼はたどり着いた。それは部屋ではなかった。構造のようなものではない。ただそこに存在しているという事実だけが周囲の空間を成立させていた。黒曜石のような棚が一列に並ぶ。けれど、本はなかった。いや、違う。見る者の理解を拒むほどに、そこにはまだ言葉という概念がない本になっていた。それは、認識されることで初めて認識される言語の起源。


 《理解を試みる者よ、問う。》


再び脳に響く声。音でも意味でもない、圧倒的な概念がぶつけられる。そんな中、翔太の前に現れた一冊の本が浮かぶ。ページも表紙もない、ただそこに存在するということだけが認識されるもの。彼が手を伸ばすと触れた指の先から言葉に変わっていた。体全体に染み込むように情報が流れこむ。


「最初の言葉は音ではなく沈黙だった。」


色々なところから入ってくる情報に脳が焼ける。視界が白く反転する。

古代の記号、記憶のような気配、神経にまるで電流が流れたような理解。

彼は見る。

それは言葉がまだ発明されていなかった時代の光景。

それは存在と言葉が未分化だった純枠な認知の海。

そこに世界そのものを表すコードが確かにあった。

そして彼は知る。


「この図書館は世界がまだ意味を持っていなかった頃の記憶を保存しているんだ。」


その時、書架が一冊動いた。

そこに刻まれてたのはたった一つの名前。


SHOUTA


翔太は息をのんだ。


「これは・・・僕の名前?」


書架が震える。ページが開かれる。けれど、そこには何も書かれていなかった。

翔太の物語はまだ記述されていない状態で存在していた。

これから彼が何を読むか、何を沈黙するかによって、それが書かれていくのだ。


「読む者よ。お前自身が言葉となる時が来た。」

という言葉が脳に流れた。


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あとがき

どうもSEVENRIGHTです。

昨日は更新できなくてすみません。ちょっと今週忙しくて明後日も更新できないと思います。

翔太と書架の関係はどうなるのか?翔太の今後の動きによって物語が書き込めれていく。

ちなみに次回は「言葉」を中心に物語を進めて行きます。

次回もぜひ読んでください。


コメントといいねをよろしくお願いします🙏

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