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第11話 記述者の試練

記述の構文はもう開かれていた。

彼は語るものとして書架に受け入れられた。

だが、それは終わりではなく始まりだった。

図書館の中心にある空白の台帳。

そこに新たな文字が宙からゆっくりと舞い降りてくる。


《試練記述 第一式》:汝、自他の境界を越えて語れ。

ただし、語ることで奪うなかれ。失わば、それは罪となる。


「他人の物語を書き換えるってことか。」


声が出ない。体が動かない。想像しただけで寒気が走る。

その意味の重さ、重責に翔太の胸は冷たくなる。

すると目の前に現れたのは、かつて街であった少年。

不登校だったが、なぜか翔太だけに笑いかけた少年。

彼の記憶、存在、背景、それら全てが書架に広がっていた。この少年の物語を今、選べる。


「選べる……? いや、それは……決めていいことなのか?」


ページには3つの候補が浮かび上がっていた。



 ① 彼は自らの殻を破り、友と共に世界を歩き始める。

 ② 彼は孤独のまま沈黙を愛し、図書館の守人となる。

 ③ 彼は世界の一部として記述されず、静かに消える。



選ぶということは翔太にとっては他の可能性を書き捨てること。未来とは常に選ばれなかった物語の墓場である。


「書かない、という選択肢はないのか?」


書架はその言葉に対して静かに震えた。

そして宙に一文が浮かぶ。


《沈黙は、存在の否定である》

 記述者が書かぬとき、物語は断絶し、世界は崩れる。


「選んで書くことはその可能性を生かし広げること。だが、その逆にそれ以外の可能性を全て切り捨ててしまうということ。」


翔太は恐る恐るペンを取った。


彼は――


 (※ここで選択は保留/次章への引き)


書いた瞬間、書架の周囲が光に包まれる。

空気が揺れ、物語の波紋が現実に影響を及ぼす。

遠くの都市で少年が一歩、校門を踏み出す描写。

あるいは、図書館のはるか遠くで彼がページを守る姿。

あるいは、何もなかった風景にただ風だけが吹く。

選ばれた物語が世界に定着していく。

その時、書架の影からもう一つの影が現れる。

「君も選べなかった過去があるのか?」

翔太に問いかけるその影。

彼もまた、かつての記述者。

そして、、物語を書きすぎた罪人。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

どうもSEVENRIGHTです。

この時、翔太は何を選んだのか予想してみてください。


コメントといいねをよろしくお願いします🙏





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