リュークが軽口で言っていた手作業で、二人はアリアやミレーヌと共に進んで村の修復に協力した。住人と一緒に火災後の片付けをし、木材や鉱石を採り、復興計画を立てた。
住民は始めは魔族の貴賓にその様な事をして貰うのは申し訳ないと思っていたが、彼らの飾らない気さくさと並外れた体力に感心し、手伝って貰う事にいつしか心から感謝の意を表した。
その合間にトラフェリアの各地に張られている結界の様子も見に行く。破れ目がないか点検する為だ。
「見た所、この国の結界は純粋なハイエルフの術の様だが、トラフェリアにはそんなに大勢のハイエルフがいるのか?」
リュークがアリアに聞く。
「トラフェリアは隣国ルガリエルとの行き来も多いので、彼らの居住率も高いのです。母の結界力だけでは常に全てを覆う事は出来ませんので、協力して貰って交代で全国土に出来る限り継続して張り続けています」
「どれぐらいの効果があるんだ?」
「そうですね…結界内以外での光属性魔法ではない動物や、勿論生まれつき光属性魔法を持った竜以外の竜達も入れない筈です。魔族の方々も…?」
「ん?」
突然アリアがリュークを振り返ったので、彼は不思議に思った。
「…ヴェイル兄様やリューク様は、国境を越える時に不自由はありませんでしたか?」
彼らは顔を見合わせた。
「特には何も」
ヴェイルが答える。
アリアは一瞬考え、手を翳して菱形の結界のパーツを出した。いくつか組み合わせてパネル状にする。
「私にもこれぐらいの大きさなら同じ強度の結界が作れるのですが…見ていてください」
アリアはそう言うと、国境付近の結界を出てパネルを地面に立て、裏側の地面を軽く突いた。
ジュっと言う声がして闇属性魔力を持ったツノネズミが土の中から飛び上がった。そしてアリアが作った結界に当たるとギャッと鳴いて気絶して落ちた。
彼女は次にリュークとヴェイルを交互に見て言う。
「えーと…じゃあ…リュ、リューク様、ちょっと触ってみてください」
「…なんでオレなんだよ」
リュークがヴェイルをチラリと見てから文句を言ったが、それでも近付いてしゃがんで結界に腕を伸ばした。
しかし何の障害もなくするすると出し入れ出来る。
「何にも起こらないぞ?」
「…嘘…」
アリアはショックで座り込んだ。
「アリア様、この方達普通じゃありませんから。魔王族の血筋ですからっ。ね?」
すぐさまミレーヌが慰める。
「つまり…トラフェリアが誇るハイエルフ達の光属性魔法の結界も、あなた方には存在すら感じられない程弱いのですね?闇属性魔法の魔力なら反発してもいいぐらいなのに…」
アリアがしょんぼりとして言った。
ヴェイルが顎に手を当てて言う。
「そう言えば
リュークがハッとして言った。
「…その仕様で言うとおかしくないか?今までの
「偶然結界に穴が開いていた、と言うのは?」
ヴェイルが聞く。
「いや、
アリアが驚いて立ち上がる。
「まさか…かなりの強さを持った者が
…不意に空気が張り詰め、4人の間に緊張が走った。