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傭兵&冒険者等級表
アダマンタイト(最上位傭兵)
オリハルコン(最上位冒険者)
ミスリル(上位)
プラチナ(上位)
ゴールド(中位)
シルバー(中位)
ブロンズ(下位)
アイアン(下位)
ウッド(見習い)
それぞれの素材でのプレートタグが作成され、等級認定時に贈与される(傭兵ギルド、冒険者ギルド共に複製不可能な魔導印章によって、個別の認識印を自動生成、捺印されたもの。プレートタグの偽造は不可能)
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「――エレノア=ヴァルスター、これよりアーフェンボルク公爵閣下の
「うむ、よくぞ来てくれたヴァルスター卿、嬉しく思うぞ……ふっ――」
「あ、笑うなよ、カレン
城塞都市アルカイズ都市長邸、つまり、アーフェンボルク公爵邸執務室にて、エレノアとカレンが笑い合う。
その様子は、仲睦まじい姉妹のようで――
「――仲良きことは美しきかな♡」
「――で、なんでコイツがいる?」
「あー……子守り?」
「なるほど、ガノスに押し付けられたか――」
「そんな!? 精霊神たるこのボクが、まるでトラブルを招く厄介者みたいな言い方、流石にひどくなーい?」
「ん、自己紹介か?」
「カレンちゃん、ひどーい!?」
エレノア=ヴァルスターとカレン=アーフェンボルク、この二人の付き合いは、実に十年近い。エレノアが八歳の頃、ファルデア王国にやってきた、ある国から――亡命してきた頃からの付き合い。
その国は、ファルデア王国にとって不倶戴天の大敵。ファルデア王国に隣接する、人族至上主義の軍事国家――ミーティアル帝国。
「――亡命?」
「うむ、エレノアは――」
エレノア=ミーティアル――それが、かつてのエレノアの名であり、ミーティアル帝国第五皇女が、かつての肩書きであった。
ただし――
「――庶子ってなーに?」
「簡単にいえば、側室の子だな」
「あたしの母さんは元々、庶民。皇帝に見染められて、側室入りしたって話だね」
「今から約十年ほど前、帝国にて大規模な政争が発生してな。本来ならば水面下で行われるのが常の政争が表側にまで波及し、髪の毛一本とて証拠として残さぬ暗殺どころか、大義名分をでっちあげては堂々と粛清、敵対する国の要人を公然と殺害するような事態にまでなった。ここまでくると、もはや内乱に等しい――」
結果として、第二第三第四皇子、第三第四皇女、合わせて五名の皇族までもが殺害。まるで、次期皇帝の座を争うかのような、血みどろの政争となった。
「当時、帝国の将軍だった者の手引きで、エレノアとエレノアの母君がファルデアに亡命。先代アーフェンボルク公である我が父の元へと逃げ延びたわけだ」
「ほえ〜、人に歴史ありだね♪」
「で、カレン姐とはその頃からの付き合い。本当の家族みたいに、良くしてもらったのさ」
「……元々、ガノスの奴に伝えてもらうつもりだったが、ちょうどいい。アーフェンボルク家当主たる私から精霊神へ特別依頼だ――」
姿勢を正し、ファルデア王国五大名家、アーフェンボルク公爵家当主としての顔となったカレンは、精霊神ソーマに嘆願する。
「ある二人の人物を帝国から救出してほしい」
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およそ一五〇年前、大陸南部における未開領域を除いた全ての領域を制圧、支配下に置いたその国家にはふたつの選択肢が存在していた。
ひとつ、国家安定を目指す富国強兵の一手。内政に注力することで軍事力の増大を目指す、長期的軍事方針。
ふたつ、武力を持って他国を自国化または属国化する軍事政策。略奪した軍需物資を用いて継戦可能とし、自国の領土や影響圏を広げる、中短期的な軍事方針。
その国の選択は――後者。
大陸南部を制圧した勢いを以て版図を広げんと狙った領域は大陸東部――大森林地帯。
そして、触れてはならない逆鱗があることをその国は知った、多大なる代償を払わされて。
その国の名は――ミーティアル帝国。ダスクード大陸南部、かつての覇者である。
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「――ヒャッハー!肉だ肉だ!」
「なんだそりゃ!無駄に元気だ、なっ!」
「様式美って大切だよね♡」
無駄に元気なエロガキこと精霊神ソーマと、二振りの大刀――シャムシールと呼ばれるそれにも似た、しかし、明確に異なるそれを以て、自由気ままな線を宙空に描いていくエレノア=ヴァルスター。
二人は現在、霧の立ち込める湿地帯にて、狩りの真っ最中。だが何故、二人が狩りを、それも、
それは、ソーマたちがミーティアル帝国に潜入してから三日後の、とある村での出来事がきっかけである――
「――こりゃ酷いね……」
「すんごくボロボロだねー」
「居住には適しておりませぬな」
精霊神さま御一行――ソーマ、エレノア、そしてエルスの三名は、目的地に向かう途中で、とある集落に立ち寄ることに。
その目的は単純。建物の中で夜を過ごす、つまり、野営を回避するためなのだが――
「ぱっと見、廃村だよね♪」
「こら、バカ!」
「的確な表現、お見事です」
ソーマの表現は正しい。ファルデア王国内であれば間違いなく廃村扱いされるようなその集落には、ポツンポツンと赤い光――灯火が確かに見られる。
そして、廃村同然の集落の住人と接触し、現在の帝国の惨状を、ソーマたちは知る。
その集落の住人は全て