歴史好きさんも、クラシック音楽好きさん、映画好きさんも――全員読んで〜!
『カペルマイスター ~宮廷楽長アントーニオ・サリエーリの苦悩~』は、かつて映画『アマデウス』が世界に広めた作曲家サリエーリのイメージ、「天才モーツァルトへの嫉妬に狂って彼を死なせた凡庸な悪徳音楽家」という風評を、根底からひっくり返してくれる作品です。
・ サリエーリがカッコいい!
本作のサリエーリは、悪辣な陰謀家ではなく、純粋に音楽を愛し続けた人として描かれています。地道な努力を重ねてウィーンの宮廷楽長まで上り詰め、時には権力に抗いながらも、音楽と誠実に向き合おうとする姿が、最高に胸熱。
「嫉妬に狂った凡人」だなんて、誰が言ったんでしょうか?
・ モーツァルトとの関係が熱い!
敵対関係? いや、それだけじゃありません。お互いを尊敬し合いながらも、羨望する感情の交錯。友情とライバル心が複雑に絡み合う二人の関係性が、物語をドラマティックに盛り上げていきます。
天才モーツァルトと努力家サリエーリの人物対比、音楽を通して出会った二つの個性のぶつかり合いが、最高に尊いです。
・ 弟子たちとの絆が泣ける!
ベートーヴェン、シューベルトなどの有名作曲家の師匠でもあったサリエーリが、普通に良い先生すぎて泣けます。
音楽界の発展のため、教育に身を捧げる姿は、感動の一言。
・ 音楽にその身を捧げた男の人生!
最後のオペラ公演を終え、終活に入る晩年の描写が、じんわりと心に沁みます……。
だんだんと時代から取り残され始めた、サリエーリの作品。彼はその事実を素直に受け入れながら、最後まで音楽と共に生き抜こうとします。
これこそ、普遍的な「芸術家の精神」ではないかと感じました。
『アマデウス』で感じたモヤモヤが全部晴れる!
サリエーリの曲が、聞いてみたくなる!
芸術の力、人間の強さと弱さが、ここまでリアルに伝わってくる小説は、なかなかないと思います。
『カペルマイスター』は、「嫉妬による殺害」という作られた神話を払拭し、サリエーリを一人の人間として、音楽家として、再発見させてくれる作品です。
クラシック好きにはたまらない描写が多く、歴史ドラマとしても非常に読み応えがあります。
サリエーリの「真実の姿」を知りたい方に、ぜひとも読んでいただきたい傑作です。