「---という訳だ。
君が素直に僕に従ってくれるなら、僕は君の秘密を暴露しなくて済む。
どうだろう」
「なるほど」
よし、分からない。
整理しよう。
向き合って座る美男子。神谷と言う男は私。村上望の現在の彼氏。戸崎連の腐れ縁らしい。
神谷は連の事をかなり嫌っており暇を見つけては連を虐めているのだとか。
そして神谷は連の彼女である私が過去体を売っていた事実を脅迫材料し、結婚前日に私を寝取って連を悔しがらせたいとの事だ。
…一向に構わん。
別に美男子に寝取られるのは構わないし相手はしっかり金を払ってくれる。
その上もし良ければ僕と付き合おうと―――。
やっぱり一向に構わない。
と言うか是非来てくれ。
―――と言う本音は心の内にしまって私は形ばかりの抵抗をする。
「…私、お仕事があるんです。
返してください」
「フフフ。
そう言われると思って予め手は打たせてもらった。
店長の安住さんって実は僕の深い知り合いでね、お願いして君を急遽休ませてもらえるようにした。
君の社会的な立場を守った上で連はいつの間にか彼女を誘拐されているーーーあぁ、なんてすばらしい!!」
店長の安住さんは連の同級生と聞いていている。
もしかして神谷さん、連、安住さんで同級生だったんじゃないの?
てかそれなら遅かれ早かれ連にバレない?
一人嬉しそうにしている神谷さんの頭の緩さに呆然としてしまっているが…一先ずは保身が優先か。
「…分かりました。
それならせめて携帯とサイフは返してください」
「連に連絡されたらかなわないからダメだ」
「それならせめてサイフだけでも」
「残念ながら公衆電話が近くに数台あるからダメだ。
もし何か欲しい物があれば僕に言ってくれ。
これから三日一緒に過ごすんだから」
「そう言えば私の事を寝取るって言っている割にまだ手を出してこないんですね」
「そりゃ君を傷つけたいわけじゃないからな。
この三日間連を困らせるだけ困らせたら元居た場所に変えそう。
連の所に戻るならそれでもかまわないし僕の事が好きになってくれるならそれはそれで構わない」
「何言ってるんですか」
「まぁ確かに何言ってるんだという自覚はある。
自慢だが金はあるから不自由はさせないぞ」
喜んで。と言いたくなったがグッと堪えた。
出来る事なら連から乗り換えたい。
連はとある会社の営業トップで、年収1000万ベースのエリート社員だそうだがこの男離している中で気付いたが恐らくそれを優に超えている。
もし此奴を虜にできれば儲け待ったなしだから。
とは言え相手が読めなさすぎる。
幼稚園児の様な稚拙な行動原理の割に高い資金力と計画性。行動力があるのだから読めない。
「…本当に何が狙い何ですか?」
「連への嫌がらせだ」
分からない。
本当に連を不幸にしたいなら私をくっつけたままにするのが正解なのだ。
何故なら私は『結婚詐欺師』なのだから。
彼氏不在で始まった美男子との秘密のデート。
この真相は未来の話。