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0611 盗まれたハート

東京府 江戸川市


大日本国の東日本をまとめる大都市。

その中でも居住区の多いこの地域は毎日色々なトラブルが発生する。


そのトラブルに対して様々なアプローチで解決を図るのがこの一之江探偵事務所の仕事だ。


「確かにウチは企業から個人に向けた調査、各種トラブルの仲裁、護衛色々やるがそれはあくまで人からの仕事だ。

死体の依頼は受け付けていない」


そう冷たく言い放つと彼女は「うそぉ…」と悲しそうにつぶやいた。


「一之江探偵事務所なら私みたいな生霊でも話を聞いてくれるって聞いたんですけど」


空中でフワフワしている『胸元に特大級の穴が開いた女性』はわざとらしく顔を手で覆った。


「聞くのは唯さ。

それよりあんたここの噂は誰に聞いたんだ?」

「一之江通りにいた三毛猫です」


今年に入って10件目になるだろうか。

あの通りに住んでいるお喋りな化け猫が俺の事を高く買って宣伝してくれるのは嬉しいのだが、あの猫は金について理解はしてくれていない。

生霊の客はローンが組めないので安定した依頼料をもらう事が出来ないし下手すれば悪霊に昇華して、銭ゲバ坊主に除霊を頼む事になって収支がマイナスになることもある。


「なるほどね。

それよりあんた。ウチは探偵だ。

慈善事業じゃないから金を払わない依頼を受ける事は出来ない」

「お金?

インターネットからの送金で構いませんか!

私死に立てホヤホヤですからまだ銀行口座生きているはずなんですけど」

「へぇ」

「1000万くらいは入っているはずです」

「いらっしゃいませお客様。

生霊のお客さんですと依頼完全達成前に成仏成される事がありますので完全前払いになりますが構いませんか?」

「構いません!

もう死んだらお金とか使いませんし相続する人もいませんから」

「でしたら三途の川の駄賃を残して全額の依頼料でもよろしいでしょうか?

今回の仕事私にお任せください。

貴方の心臓を盗んだ人を必ずや旧江戸川に沈めて見せましょう」


やるじゃねえかあの化け猫!

仲介手数料にカニ缶買ってやるからな!!



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