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0708 目覚めの朝

重い瞼をゆっくりと持ち上げる。


熱ではっきりしていなかった頭が軽くなっている。

両の目で見えた視界がゆったりと焦点を合わせ、病室の天井が見えた。


記憶をたどりながら枕元のナースコールを押す。


視界の左下でチラリチラリと輝く緑の光。

焦点を合わせれば「AM8:12」の表記。


時計があるわけではなく視界に直接映り込んだ数字に心が高鳴った。


試験義眼の成功である。


私は左の手で義眼が埋め込まれているはずの左目を覆い隠すがやはり数値はそのまま視界に留まっていた。

目を閉じれば数値もゆっくりと消えるが目を開ければ数値が見える。

それと左上に移るのはディレクトリのマーク。


事前説明の通りディレクトリに視線を合わせ一度だけ目を見開けばディレクトリがクリックされディレクトリの中身が表示される。


「Hello World」


ITの世界に置いて始まりを表す決まり文句。


寄り目にするとディレクトリが閉じられホームに戻り、視線を合わせて左目をかっぴらけば再び「Hello World」の文字。


完璧だ。


私は嬉しさのあまり何度も何度も同じ動作をしていると「お、楽しそうだね」と、声をかけられた。


「そりゃまぁ。

話を聞いた時からめっちゃドキドキしてましたけど実際にこうやってPCが自分の体と繋がっているってドキドキしか無いっすよ。

拒否反応の発熱はめっちゃ苦しかったですけどやったかいありますね」

「それならよかった。

どうだい、左目が治った感想は」

「清々しいっすね。

この目、最高に気に入ったすよ!」



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