秋の入り始め。中学校のメンバーとの同窓会までの待ち合わせ。
社会人になってから上京してしまい皆と顔を合わせるのは実に2年ぶりくらいか。
中学からの友達の一人とは今も連絡を取り合っているがクラスメイトの皆はどうしているだろう。
そんな思いと共に少し早く会場周辺の駅についてしまったのでカフェへ。
空き時間に昨日買った漫画を読もうと考えレジで並んでいると「もし」と声をかけられた。
振り向いた先にはーーー誰だろうか…。
見覚えのある様な男性だ。
細身で背が低く、ジーンズにパーカーを合わせたラフな格好の男性。
ふと意識して自分の視線を落とし服を確認する。
私も彼と同じ同色のジーンズに同じパーカーだ。
彼の着ているパーカーってレディースの物のはずなのだが妙に似合っている。
と言うか女性物なのに袖が通ってしまうのはいかがなものか…
「もしかして秦野さん?」
「…はい。
えっと…、どなたです?」
「高橋だけど覚えてる?」
「あー…。」
いた、そんな名前の男子。
と言うか彼と完全に服装が一致してしまった。
私達は適当に商品を購入してから対面の席に座った。
座ってしまった。
特に話す事は無いのに彼を先に座らせるように促してしまった。
「お久しぶりですね、高橋さん」
「いえ、こちらこそ秦野さん。
6年ぶりくらいですか?」
「はい、そうですね」
「やっぱり。
秦野さんって確かこっちには住んでないですよね。
今どこにいるんですか?」
「私は東京の世田谷に」
「え!?
世田谷ですか?」
「…はい」
「いや、自分も世田谷に今いるんですよ」
「本当ですか?」
「はい。自分は東京の食品メーカーで営業をしてます。
秦野さんは?」
「私は…漫画のアシスタントを」
「え!?
どんな作家さんのアシスタントですか?」
「あ…、それは守秘義務何で」
「うわ…凄い。
って事は秦野さん漫画家志望?」
口下手で座らせたときはどうしたら良いかと悩みそうになったが彼が話を振ってくれるから話が進む進む。
コロコロ笑う彼に釣られて笑っていると電話が鳴る。
どうやら友達が着いたらしい。
私がいるカフェの場所を伝え数分「疲れ~」と言う挨拶と共に彼女、徳田篠が来る
「~って高橋?」
篠の目が私達を行き来する。
「二人っていつから付き合ってるの?」
「え?」「ん?」
疑問が出てから私達が置かれている状況を思い出し合点。
確か篠は高橋さんとも仲が良かったはず…。
多分彼も同じことを思ったのだろう。
私と目線を合わせた後、篠に意味深な微笑みを返す。
私もそれに乗っかって笑いを堪えながらいつものトーンで言葉を紡いだ。
「別に同じところに住んでるとかそんなわけないですよ」
「え!?チョっ!どういうこと!!」
驚く篠に私達はポーカーフェイスを保つ事が出来ず声に出して笑い合った。