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0711 君のいない助手席

「流石に夜だとすいてるね」

「そやね。

こんな田舎道誰も使わんし走り放題よ」


友人四人で走る田舎の道。

並走する車はおろか対向車すらすれ違わない。


社内に響くタイトルも知らないジャズと助手席で寝ている友人のいびき声。

のんびりとした空気感に少し前まで微睡んでいたがいつの間にか目が覚めていたので質問する。


「志田ぁ。

これ何処向ってるのさ?」

「んぁ?

きいとらんかったのか?」

「さっきまで寝てたから知らないさ」

「山の中にある天文台だね。

今日は星空が良く見えるそうだ」

「へぇ…」

「あと30分もすれば山に入るね」

「あぁ、その前にトイレによりましょか」

「そうだね。小黒、コンビニ行くけど何かいるかい?」


助手席で寝ている小黒を後ろの席にいた佐川がつついて起こそうとしたが彼は少し唸るだけで起きようとはしなかった。


しょうがないので彼をそのままにしてコンビニに到着して三人でコンビニに入る。

真っ先にトイレに向かった志田を他所に俺と佐川は商品を見に行った。


今寝ている小黒は帰りの運転を頑張ってくれる予定なので眠気防止のコーヒーが良いだろうか。

あいつのことだから味はブラック。

志田は決まってペプシ。

佐川は自分の分のドリンクを既に取っているのであとは自分だけ。


「江渡、これみて見ろよ」


佐川が指さしたのは自分の知らないドリンクだ。

恐らくコーヒーなのだが珍しいパッケージのペットボトル飲料。


口元が細くなく寸胴状態のコーヒーだ。


「これ車で飲んでたら志田が心配しそうだな」

「お前それ買えば?」

「いや、まずコーヒーはいらねぇよ」


そんなどうでもいい会話をしながら俺はお茶を手に取った。

会計を済ませている間に志田も戻ってきた。


車に戻って最後の山道。

俺がさっきのコーヒーの事を話題に出すと志田が詰まらなさそうに言う。


「それなら小黒に買ってくれば良かったじゃん」

「でもお前そんなこぼしそうなドリンク持ってたら絶対煩いだろ」

「もちろん」


と、そんな時に不意に電話が鳴った。

着信音からして恐らく志田の電話。


彼は携帯を取り出すと裏手に携帯をこちらに渡してきた。


彼の携帯を代わりに受け取って電話に出る。


「もしもし、志田に変わりまして江渡です」

『お前!俺を置いてくなよ!』


知っている声色。

一瞬何を言われたのかと思い呆けてしまったのだが直ぐ現状を理解した。


「志田!さっきのコンビニに小黒忘れて来てる!!」

「(´Д`)ハァ…?」


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