「浅井君ってそんな事も出来たんか」
「まぁピン四本までだけどな」
学校の空き教室。
先生の指示で片付けを行っていた俺は偶然にもジャグリング用のピンを発見し、丁度同じく片付けを手伝ってくれていた榊原さんにジャグリングを披露していた。
幼稚園の頃何故かハマって練習した俺の特技の一つ。
「じゃあ私も一つ特技を見せようかな」
「え、何?」
「ほい、手をつなごうか」
差し出された手を俺は言われるがままに掴んだ。
彼女は掴んでいない方の手で俺の手を慎重に調整しつついう。
「人間って言うのは心と体が繋がっている物だ。
心が乱れればどれだけ頑張ろうと体に反応が出る。
質問をするから答えずに頭で考えていてくれ」
「ほぅ」
「今日の朝ごはんはパンだったか?」
我が家はパンを朝に食べない。
パンはフワフワしていて大喰らいの我が家ではコスパが悪いのだ。
ちなみに今朝の朝ごはんは昨日の鍋料理の残りををスープにして作ったうどんである。
「ごはんかな?…と、違うようだ。
食べていないとか?…違うみたいだな…
あとは…、麺かな?
君の朝ごはんは麺だね」
「おぉ、正解」
「私は人の嘘とか二択質問を当てられるんだよ」
「へぇ…凄い特技だな」
「おっと、所で話は変わるんだけど同じクラスの早乙女さんいるじゃん」
「あぁ、うん」
「浅井君って早乙女さんの事好きだよね」
不意に飛んできた質問に驚いた。ーーーが、それは違う。断固としてあり得ない
「あぁ、あんま好きじゃないのね。
じゃあ告白されたら付き合う?
ーーーあぁ、付き合わないんだ。
それってもしかして―――」「ちょいちょいちょいちょい。
人の答えきかずにドンドン話進めないでくれるか?」
「あぁ、ごめん」と榊原は笑う。
「てかどうして早乙女?」
「あぁ、早乙女さんから頼まれたんだよ。
浅井君の事を調べて欲しいって。
所で浅井君。君は早乙女君の事どう思ってるんだい?」
俺はその場を逃げようと振り返り部屋を出て行こうとしたが榊原が握った手を離さない。
「ちょっと待ちなって浅井君。
早乙女君の事どう思ってるんだい?」
「いや、早乙女は出来れば関わり合いたくない!
何か怖いしキモい!」
「それはどうしてさ」
「榊原は知らないかもしれないけどあいつヤバいんだよ。
ヤンデレとかストーカーとかそう言う類なんだよ」
「…え?ガチ?」
「ガチ。
あいつ休日に家の前で俺の事出待ちするぐらいにヤバい奴だぞ」
「…私友達辞めた方が良いかな?」
「悪い事は言わねぇ。
辞めとけ」
「うーん…この反応ガチだ…」
榊原はそこで俺の手を離した。