漫画やアニメで見た徹夜明けは皆が皆ボロボロになって廃人の様だったが実際経験してみると「徹夜」には何の灌漑も無かった。
登りゆく朝日は夕日程美しくはなく周りは静かで唯の虚無。
徹夜してみたら何か変わるかもと期待を抱いていたが残っていたのは虚無だけだった。
家のベランダで頬杖を突きながら静かな街並みを見下ろす。
「何してんんだ、こんな朝っぱらから」
「あ、叔父さん」
振り返ればこの家の家主である叔父さんが寝間着姿で立っていた。
「おはよう。
それで何をしていたんだい?」
「徹夜していたんだ」
「へぇ、徹夜ね。
お前さんの年なら興味を持って当然だが何か分かったかい?」
「徹夜ってそんなにワクワクしないね」
「へぇ、面白い事に気づいたな」
叔父さんは僕が腰を下ろしているベランダのベンチに一緒に腰かけた。
「夜中の間何してたんだい?」
「ずっとゲームしてたよ」
「なるほど。
そのゲームで何か分かった事は?」
「分からない。
いつものゲームだった」
正直にそう言えば叔父は軽く笑って行た。
「これはあくまで叔父さんの意見なんだけど、大事なのは過程なんだよ。
君が誰と何をして徹夜したか。
それが大事なんだ」
「へぇ」
話半分に彼の言葉を聞く。
ーーー叔父の言っていた事は良く分からなかった。
だが不思議と叔父さんの言った言葉は一言一句頭に焼き付き、三年が過ぎても忘れる事は無かった。
高校1年、文化祭前夜。
人生二度目の徹夜が始まる。