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0721 儚い恋心

帰宅すれば妹がソファーに突っ伏していた。


お気に入りのぬいぐるみを抱え顔を突っ込んでジタバタ。

直接本人に声をかける前に俺は傍らにいた姉に声をかける。


「アレはなにがあったの?」

「フラれたんだって。

初恋玉砕って事みたい」

「なるほど。

ってか初恋って誰さ」

「クラスの男の子だって。

告白したら彼女いるからって断られたみたい」

「あらま」

「ちなみに直美ちゃんの彼氏でその事を直美ちゃんに話してあんた空気読めないよねって言われたらしい」

「友達の彼氏を積極的に寝取りに行って彼女に報告するなんて度胸あるな」

「ほんとそうよね。

直美ちゃんに確認取ったら一周回って許してるってさ」

「あ、許してるんだ。

親友があまりにもバカだから怒る気にもなれないって」

「なるほど、傲慢で空気読まない妹の性格が幸いしたわけか。…いや、まず空気読めてたら告白しないか」

「まぁそうでしょうね」

「なるほど」


俺は再び妹の方を見る。

妹は相変わらずジタバタしている。


わざわざリビングのソファーの上でジタバタしているという事は俺たちに心配して欲しいのだろう。

だがわざわざそんな妹に付き合ってやる義理もない。


二人で放置していれば少し後に妹が起き上がり姉に絡みに向かった。

話している内容を聞くにありふれた愚痴。まぁ恋愛に建設的な話し合いなんて求めるのは野暮だが本当に取り留めない話だった。


とは言え妹の様子から察するに今回の恋は大したこと無さそうだ。

儚く消えた初恋に教訓を見つけ妹が成長できればいいなと思いながら俺はリビングを後にした。




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