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0722 癒し系彼女

「お前彼女いたの!?」


社会人になり実に一年ぶりに会う友人との会話の中で俺は思わず驚いた。

学生時代恋愛に対して消極的でコイツ一人で死んでくんじゃないかなぁ…と思っていた友人に彼女がいる。

それどころか同棲しているとか。


「お前どうして…」

「いや、一人暮らし始めてから思ったんだけど一人で生活するの効率が悪いなぁ…って思って」

「あぁ、それすっごい分かる。

でもだからいきなり彼女は出来ないだろ」

「まぁ確かに。

でも一人で暮らしてて効率以上にさみしさが出て来てさ。

学生の時は何だかんだ親がいたから寂しくなかったけど一人暮らしの一人の時間が悲しくて恋人作った」

「おぉ、まさかの超展開…」

「君と友達でいて本当に良かったよ。

君と言う前例が無かったら彼女との関係も多分続いてない」


虚空を見つめしみじみ呟く彼に「人間らしさ」を感じた。

学生時代は不器用で愛想が悪くてバカな奴だったが人間らしくなっている事が驚いた。


ここまで彼を人間らしくしたのはどんな彼女なのだろうかと俄然興味が湧いて来る。


「お前の彼女どんな感じなんだよ」

「顔が良い」

「…」


高校時代学校で誰が一番可愛いか論争をした際に真顔で学校に住み着いている猫の名前を上げるくらい人間に興味のない奴が一番最初に顔を褒めやがった。


「僕より頭が良くてストイックで会話は少ないんだけど行動の端々で気遣いが見えて時折意味もない接触をしてくれる猫みたいな女の子。」

「彼女の事猫に例えるんだ…」

「僕が猫にばかり構っていると拗ねて来るのも可愛い所かな」

「猫に嫉妬するんだ」

「この間「猫みたいに可愛い」って言ったら顔をひっかかれた」

「それはほぼ猫じゃねぇか」


彼が少し笑う。


「ほぼ猫だよ。

気ままだし、静かだし、時々急にべたべたしてくるしいてくれるだけで心が安らぐし夜行性だし」

「夜行性?

吸血鬼か何か?」

「あぁ、あの子看護師なんだよ。

夜勤によく行くから」

「あぁ、それで夜行性。

で、その彼女のお名前は?」

「ミケ」

「お前の彼女人間だよな?」

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