裃さんの中で、『変わりたい思考』と『変わりたくない思考』がきっとこんな風に対話を続けているのだろうなと、そんなことを思いました。
普段から考えていなければ出せない出力というか、思考の変化がなめらかでした。
名前の無い主人公『ぼく』がいることで、哲学的なカノジョ=実柚の魅力がどんどん浮き彫りになっていきます。
語る。問いかける。簡単に答えは教えない。近寄り難いのに、急にすっと寄ってくる。カップを触る指先と、コーヒーの香り。
実柚は『ぼく』を翻弄しているようで、きっと自覚して、押し付けがましくなく誘導している気がします。
可愛い。そして、これはずるい。
でも、『ぼく』も只者ではありません。
実柚との対話を通じて哲学について考えているうちに、直感でワープしたようにゴールまで一直線。
過程が大事ってこんなに言ってるのに、聞かない(笑)
そんな『僕』だからこそ、実柚は『変わりたいけど、変わりたくない』と思ったのかな。まさに、哲学。
二人が変わるのか、変わらないのか、気配だけ置いてあるのも気持ちの良い読了感でした。