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第4話:猫神様の庭付き戸建て


 猫神様がくれた異世界の家の中。

 俺はキャットフードと一緒に買ってきたものを猫神様に見せてみた。


「店員さんが、これも必需品よ~って言うから買ったんだけど、こっちは問題ない?」


 引っ越し荷物の横に置いた箱の中から取り出したセット物。

 それはシステムトイレと呼ばれる猫用トイレと、専用の砂やシートが入ったセット品だった。


「ふむ。こちらは特に問題ないようじゃ」


 猫用トイレを見下ろして呟く、巨大フサフサ茶トラ猫。

 猫の姿の神様も、こういうトイレを使うんだろうか?

 神様が排泄とかするイメージないけど。


「この粒々は木でできておるな。これならそこらの木で作れるぞい」

「マジっすか」


 木から猫砂を生成できるらしい。

 消耗品みたいだから、作れるものなら自作した方が安上がりだろう。


「どれ、試しに作ってみるかの。ついでに【生成】の魔法を授けてやろう」


 猫神様がくれた4つ目の魔法は、素材から何かを作り出す生産系の魔法だった。

 これで俺は【空間移動】【分解】【時戻し】【生成】の魔法が使えるようになる。


「庭へ行こう。ついてまいれ」

「母子はあのまま置いといて平気?」

「うむ。お産で疲れたからゆっくりすると言っておるぞ」

「じゃあ、トイレの設置だけ済ませておくよ」


 俺は新品のシステムトイレを説明書を見ながら組み立てて、猫砂とシートをセットして段ボール箱の隣に置いた。

 猫を飼うのは初めてだけど、強力なアドバイザーがついているから戸惑いはほとんど無い。

 何よりも直接ではないものの、意思疎通ができるのはかなり助かる。


「ついでにこの家がどこに建っているのか、見ておくとよいじゃろう」


 と言う猫神様に連れられて、出てみた家の外は深い森の中。

 なるほど、木はいっぱいあるから木製の猫砂作りの素材は充分だな。


「上空から見せてやろう。我の背中に乗るがよい」

「えっ?! いいの?!」

「かまわんぞ」


 猫神様に言われて、俺はフサフサした毛並みに覆われた背中に乗る。

 柔らかくて滑らかな毛皮は美しく、その下から温もりが感じられた。


「では飛ぶぞ。落としたりはせんから安心せい」


 ふわり、と猫神様が俺を乗せて空へと浮かび上がる。

 揺れはほとんどなく、気球のような上昇だ。

 家と木々が下へと離れていく。

 眼下の風景がジオラマのように見える頃、俺は新居がどこに建っているのか把握した。


「聖夜よ、そなたに与えた家は庭付き戸建て、この島全体がそなたの庭じゃ」

「もしかしてこれ、無人島?」

「勿論じゃ。我が許可した者しか、ここに入ることはできぬ」


 猫神様の物件は、無人島つき戸建て。

 青い海と珊瑚礁。

 緑の木々と白い砂浜。

 小さな島の真ん中に、小さな家が建っていた。



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