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第6話:無人島の自給自足


「この島って山菜とか木の実とか、俺が食べられる物はある?」

「うむ。食用になる植物は豊富じゃぞ。鳥の巣から生みたてタマゴも手に入るぞい」


 猫砂を作って帰宅した後、俺は猫神様に聞いてみた。

 せっかく無人島暮らしなんだし、テレビでよくやってるみたいな自給自足っぽいのができるかと期待したんだ。

 猫神様からは、期待通りの答えが返ってきた。


「明日の朝食前に、食材探しに連れていってやろう」


 って嬉しい言葉を頂いてから、俺は新居の寝室へ向かった。

 飾り気のないシンプルなデザインのベッドも布団も真新しい。

 これって猫神様が作った物だろうか?

 敷布団の弾力は俺好みで、掛布団も重すぎず軽すぎずちょうどいい。


 異世界と地球との時間差が調整可能なのはありがたい。

 時間を気にせずのんびり暮らせるなんて、幸せの極みというやつか。

 俺は新居のベッドでたっぷり睡眠をとった翌朝、食材探しに連れていってもらった。


 大きな葉が放射状に広がる草の中心にある新芽は、天麩羅にしたら美味しそう。

 ちょうどキャットフードの分解で小麦粉は手に入ったし、後で作ってみよう。


 小ぶりのバナナみたいなものが房になった果実は、黄色い皮に黒い点々がついたら食べ頃らしい。

 バナナと同じで皮を手でむいて生食できるから、オヤツにいいな。


 小さな粒が房になった山葡萄っぽいものは、色はマスカットに似ている。

 これも生食できるとのことで、オヤツその2だな。


 鳥の巣から貰うタマゴは欲張らずに1つだけ。

 毎日1個ずつ産んで5個くらいになったら抱卵を始めるそうで、その前にタマゴが減ると産み足しするらしい。


 森の中をちょっと歩いただけで、充分な量の食べ物が手に入った。

 異空間倉庫に入れておけば腐らないのは便利だな。



 猫神様は俺を連れて川へ向かった。

 川には、何匹か魚が泳いでいるのが見える。


「海や川へ行けば、新鮮な魚介類が獲れるぞい。獲り方を教えるゆえ見ておれ」


 って言いながら、猫神様が見せた魚の獲り方が豪快過ぎてビックリだ。

 川岸に立って片手(前足)をブンッと振ったら、キラキラ光りながら魚が俺の足元まで飛んできた。

 猫神様は身体が大きいから、まるでヒグマが鮭を獲っているみたいだよ。


「それ、人間おれにできるかな?」

「風魔法を使うのじゃ。風を水中に叩き込み、魚を掬い上げて岸へ飛ばすんじゃよ」


 俺はまた1つ、神様から魔法を授かった。

 特に名前は無いらしいので、【風の金魚すくい】とでも呼んでおこうか?



 海岸へ行くと、砂浜で貝が採れた。

 白い二枚貝、大きさはシジミくらい。

 味噌汁に入れたら美味そうだ。


「この海藻も人間には美味しく食べられるものじゃぞ」


 猫神様はザブザブと海へ入っていき、黒っぽいものを空中に浮かび上がらせて俺の方へと送る。

 もずくっぽいから、ポン酢醤油をかけて食ったら美味いかも。


「神様、毛皮ビショ濡れだけど大丈夫?」

「うむ、問題無い。魔法で乾くからの」


 戻ってきた巨大フサフサ茶トラ猫は海水を滴らせている。

 岸へ上がると、その身体から海水が離れて空中で水の玉になって浮かんだ。


「【分離】という魔法じゃ。この世界では主に生活魔法として使われておるぞ」


 魔法によって猫神様の毛皮から離れた海水は、水玉のまま空中を漂って海に戻っていった。



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