「そうじゃ、ルカに栄養のあるものを食べさせるため、オラオラ鳥を狩りに行こうかの」
「飛び蹴り大丈夫?!」
「ははは。当たらなければどうということはない」
朝食を終えてしばらくノンビリした後。
猫神様は、とんでもないことを思いついた。
俺ではとても相手にならないであろう鳥を狩りに行くという。
魔法じゃなくて物理で狩るそうだけど、どうやるの?
◇◆◇◆◇
お昼前の森の中。
猫神様に案内されながら歩いて行った先に、そいつはいた。
オラオラ鳥。
全体的な形は、鶏のオスに近い。
但し、大きさはダチョウくらいあるが。
体色はフラミンゴみたいな薄紅色。
鶏冠は、炎を纏っていた。
(うわ~、イメージ通り過ぎて笑える)
俺は心の中で呟く。
猫神様は、あれをどう狩るのだろうか?
「ここで隠れて見ておれよ」
「うん」
猫神様は、俺を木陰に待機させてバリアみたいなもので包んでくれた。
っていうか、これだけ離れていて防壁が必要なの?
そのバリアの意味は、猫神様がオラオラ鳥に奇襲をかけたから明らかになった。
まるで落雷のような轟音と共に、地面が抉れて土砂とちぎれた草と木の葉が空中を舞う。
それがバトル開始の合図みたいになった。
オラオラ鳥の飛び蹴りを、後足だけで立つ猫神様の片手(前足)が払うように受け流す。
そこから流れるような動作で巨大ネコパンチを繰り出す猫神様の攻撃!
オラオラ鳥はフッ飛ばされるが、バッ! と両翼を広げて空中で停止する。
着地から地面を蹴り、前方へ跳躍したオラオラ鳥の嘴攻撃!
猫神様はスイッと横へ避けた後、無防備になったオラオラ鳥の首に爪を出した手を振り下ろす。
ザシュッ! という何かを切り裂くような音がして、勝敗が決まった。
「クエェェェ……」
絞り出すように声を漏らし、大きな赤い鶏みたいな奴がドサリと倒れる。
猫神様は二足歩行のまま、近くの木に歩み寄ってそこ絡みついている太い蔦を取った。
「こいつの血抜き方法は、鶏と同じじゃ」
猫神様はそう言うとオラオラ鳥の足に蔦を括り付け、大木の枝にぶら下げる。
何するか察した瞬間、オラオラ鳥の頭と胴体がお別れしたよ。
充分に血抜きをした後、猫神様は爪で蔦をスパッと切ってオラオラ鳥を異空間倉庫に入れた。
空中に開いた異空間への穴は閉じず、猫神様は穴に向かって何か魔法を使い始める。
「【解体】の魔法じゃ。異空間倉庫の中に入れて使えば、そのまま保管も出来て便利じゃぞ」
「なるほど」
「聖夜もオラオラ鳥が狩れるくらいに鍛えてやろう」
「俺、強くなれるかなぁ……」
さっきのバトルを、俺もやれと。
無人島スローライフの筈が、なんか格闘ものみたいになってきたような?