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第12話:御堂さんがくれた試供品


 現実世界で仕事を終えた後。

 異世界の自宅に帰った俺は、御堂さんから貰ってきた物を猫神様に見せた。

 グレインフリーと書いてあるキャットフードの、第一主原料はチキンだ。



【原材料】

 チキン、チキンミール、えんどう豆でんぷん、キャッサバ粉、大豆たんぱく、牛脂、脱脂大豆、卵、えんどう豆たんぱく、キャノーラミール、酵母、たんぱく加水分解物、ミネラル類(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロライド、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレン、硫黄)、グリセリン、アミノ酸類(リジン、タウリン、シスチン、メチオニン)、ビタミン類(A、D、E、K、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、B12、コリン、ビオチン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール)



「うむ、なかなか良い物だ。小麦粉やパン粉は入ってはいないな」

「グレインフリーって、小麦やとうもろこしなどを使用していないことを意味するらしいね」


 袋に書いてある成分表を、ソファに並んで座る巨大フサフサ茶トラ猫と俺が見つめる。

 御堂さんがこの光景を見たら、きっとビックリするだろうな。

 見せるつもりはないけど。

 神の島は、猫神様が許可する者だけが入れる島。

 自然豊かで静かな最高の環境だけど、お手軽に友人知人を呼べる家ではなかった。


「みっ、みっ」

「はいはい、今あげるよ」


 小袋を見て、ルカが可愛く鳴く。

 猫神様に通訳してもらうまでもなく、ルカが何を言いたいか分かる。

 俺に猫語は分からないけれど、一緒に暮らしているうちに何となく猫の気持ちが分かるようになるのかもしれない。


 俺はルカ用の小鉢に試供品フードを入れて、段ボール箱の中に置いてあげた。

 ルカはすぐに顔を突っ込み、勢いよく食べ始める。

 静かな家の中に、ドライフードを咀嚼するカリッカリッという音が響く。


「いい食べっぷりだなぁ」

「今のルカは自分を含めた5匹分の栄養をとらねばならんからな。食べても食べてもすぐ腹が空くんじゃろう」


 大口を開けてガツガツとかき込むように食べるルカを、ノンビリ眺める俺と猫神様。

 ルカの食べ方は忙しないけど、ここではゆっくり過ごせる。

 仕事や通勤など、時間に追われる以前の暮らしとは大違いだ。


「キュ~、キュ~」


 箱の中では、小さい毛玉たちが授乳を中断されて抗議の声をあげていた。

 茶トラ猫のソルと黒猫のルナはすぐ見分けられるけど、キジトラ2匹は相変わらず見分けつかない。

 キジトラたちの見分けがつく日はくるのか?!

 大きさに違いが出たり、顔つきが違ってきたら、どっちがどっちか分かるようになるかな?



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