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第14話:お肉を狩りにいく


 時間に縛られないノンビリ暮らし。

 世界樹の実を手に入れた後から、猫神様による拳法レッスンが始まった。


「聖夜は健康であらねばならん。毎日身体を動かすことが大切じゃぞ」


 と言う猫神様が教えてくれるのは、猫の動きをアレンジした猫神流拳法、【猫拳ねこけん】。

 毎朝1粒世界樹の実を食べて、猫拳を習うのが俺の日課になった。

 世界樹の実は24時間自動回復効果があるので、仕事前にレッスンしても全然疲れない。



 そんな異世界生活も半月近くなった頃。


「今日は肉を狩りに行こうかの」

「何の肉?」

「クリムゾンボアじゃ」

「どんな生き物?」

「豚っぽいヤツじゃよ」


 獲物の名前を言われても分からない。

 豚っぽいのは分かった。

 猫神様に言われるままについていった俺。


「ほれ、あいつじゃ」

「え……」


 緑の森の中、そいつはいた。

 豚かといえば、確かに豚の仲間っぽいけど。

 牙があるそいつは豚じゃない、紅い毛色のイノシシだ。


「今朝も回復の実は食べておったな? 死にはせんから挑んでみるがよい」

「マジっスか」

「うむ」


 若干無茶振り感があるクリムゾンボア初狩りが始まった。


「ヤツは突進が得意じゃ。牙を避けながら首を狙ってみよ」

「難易度高いなぁ」


 紅のイノシシは、前足で地面を掻きながらこちらを睨んでいる。

 突進される前に突進してやる!

 ダッシュで行った俺は、ブヒッ? と言われてあっさり避けられてしまった。


「ほれ、気をつけい、蹴りがくるぞ」

「え?! うわぁっ!」


 蹴るなんて聞いてないよ~

 飛ばされながら、俺は心の中で呟いた。

 スローライフって、サバイバルのことだったんだね。


 世界樹の実が無かったら大怪我で動けなかったかもしれない。

 瞬時に治るけど、痛いもんは痛いからね?


「どうじゃ? そろそろヤツの動きが視えてきたのではないか?」


 猫神様の言うとおり。

 突進されたり蹴られたりするうちに、その動作をする前の前触れというのか、予備動作みたいなのが分かってきた。

 これから何をするか予測できたら、突進はそんなに危険ではなくなる。


「ブヒッ!」


 クリムゾンボアが前足で地面を掻き、腰をグッと沈める。

 それは、突進の合図だ。


 俺はギリギリでクリムゾンボアを躱しながら、その首に爪つきナックルをお見舞いしてやった。

 猫神様がオラオラ鳥の首に叩き込んだのと同じ系統の攻撃、ネコパンチ。

 俺には猫みたいな爪は無いので、小刀みたいな爪が4つ付いたナックルを使用する。

 狙いは勿論、首の横にある頸動脈。


「ブギィィィッ!」


 クリムゾンボアが絞め殺される豚みたいに叫び、首から血を吹き出して倒れた。

 ピクピク痙攣した後、動かなくなった紅いイノシシを見て、やり遂げた感が脳内に広がる。


 ……が。


「よくやったの。次は血抜きじゃ」


 もう一仕事あった。

 血抜きといえば、オラオラ鳥に猫神様がやってたアレですね……


 殺ったもんはしょうがない。

 俺はそこらの蔦で獲物の脚を縛り、太い枝に蔦を投げかけて獲物を引っ張り上げて吊るす。

 その後、俺の風魔法でクリムゾンボアの頭と胴体がオサラバしたのだった。

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