俺のスローライフはサバイバル。
自給自足は時々バトルになることがある。
「聖夜後ろ! 後ろじゃっ!」
「え?! 痛痛痛っ!」
タマゴを頂きに行った森の中。
振り向けば奴がいた。
燃える炎の鶏冠をもつ、ダチョウサイズの鶏。
フラミンゴみたいな色したそいつの名はオラオラ鳥。
飛び蹴りを得意とする筈だが、今俺が食らっているのは嘴による攻撃だ。
「オラオラオラオラ~ッ!」
嘴攻撃なんて聞いてないよ~
頭をバシバシつつかれながら、逃げる俺。
しかしオラオラ鳥は普通の鶏の三倍速かった。
俺も結構速く走れるようになったけれど、全然引き離せない。
傷は瞬時に治るとはいえ、つつかれ続けるので新しい傷が次々にできてしまう。
「聖夜、この際もうそいつも狩るしかなさそうじゃ」
「えっ? これ狩るの?!」
「問題無い、そやつはオスじゃ。タマゴはメスに任せればよかろう」
「え~、そういう問題では……」
「オラオラオラオラ~ッ!」
猫神様が無茶を言う。
これどうやって倒すの?
逃げても追いつかれてつつかれる。
タマゴを取る前に攻撃されたので、俺はタマゴを1つも持ってないんだが……
こいつ、地の果てまでも追いかけてきそうな勢いだよ。
「オラ~ッ!」
「うわぁぁぁ!」
とうとう飛び蹴りがきた。
数メートル飛ばされたぞ。
肋骨何本か折れたかも。すぐ治ったけど。
地面に落下して転がった俺に、オラオラ鳥が突進してくるのが見える。
これは結果的には間合いがとれたからラッキーかも?!
「チャンスじゃ聖夜!
「押忍!」
猫神様に鼓舞されて、俺は立ち上がるとすぐ構える。
両手の指無しグローブが、俺の意思に反応して瞬時に爪付きナックルに変わった。
このグローブは、俺が猫拳を使うときだけ武装する魔道具だ。
猫が自由に爪を出し入れするように、ナイフのような爪が両手に現れる。
燃える鶏冠を靡かせて、奴が来る。
オラオラ鳥の突進は、クリムゾンボアより遅い。
「オラオラオラ~…オ?」
突進を躱された巨大鶏が、一瞬キョトンとする。
俺は無言で、その首の頸動脈を爪で切り裂いた。
一撃必殺、技名ないから動脈斬りとでも言っとくか?
オラオラ鳥の首の横から、噴水のように大量の血が噴き出した。
「ゲェェェ~ッ!」
甲高い耳障りな叫びを上げて、巨大な鶏がドサリと倒れる。
絶命すると同時に、燃える鶏冠の炎が消えた。
「うむ、見事じゃ。あとは血抜きじゃな」
「う、うん……」
休む間もなく、俺はそこらの蔦をロープ代わりにオラオラ鳥を吊るし、頭と胴体をオサラバさせたのだった。