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第18話:卵か肉か

 俺のスローライフはサバイバル。

 自給自足は時々バトルになることがある。


「聖夜後ろ! 後ろじゃっ!」

「え?! 痛痛痛っ!」


 タマゴを頂きに行った森の中。

 振り向けば奴がいた。

 燃える炎の鶏冠をもつ、ダチョウサイズの鶏。

 フラミンゴみたいな色したそいつの名はオラオラ鳥。

 飛び蹴りを得意とする筈だが、今俺が食らっているのは嘴による攻撃だ。


「オラオラオラオラ~ッ!」


 嘴攻撃なんて聞いてないよ~

 頭をバシバシつつかれながら、逃げる俺。

 しかしオラオラ鳥は普通の鶏の三倍速かった。

 俺も結構速く走れるようになったけれど、全然引き離せない。

 傷は瞬時に治るとはいえ、つつかれ続けるので新しい傷が次々にできてしまう。


「聖夜、この際もうそいつも狩るしかなさそうじゃ」

「えっ? これ狩るの?!」

「問題無い、そやつはオスじゃ。タマゴはメスに任せればよかろう」

「え~、そういう問題では……」

「オラオラオラオラ~ッ!」


 猫神様が無茶を言う。

 これどうやって倒すの?

 逃げても追いつかれてつつかれる。

 タマゴを取る前に攻撃されたので、俺はタマゴを1つも持ってないんだが……

 こいつ、地の果てまでも追いかけてきそうな勢いだよ。


「オラ~ッ!」

「うわぁぁぁ!」


 とうとう飛び蹴りがきた。

 数メートル飛ばされたぞ。

 肋骨何本か折れたかも。すぐ治ったけど。

 地面に落下して転がった俺に、オラオラ鳥が突進してくるのが見える。

 これは結果的には間合いがとれたからラッキーかも?!


「チャンスじゃ聖夜! 猫拳ねこけんで反撃じゃ!」

「押忍!」


 猫神様に鼓舞されて、俺は立ち上がるとすぐ構える。

 両手の指無しグローブが、俺の意思に反応して瞬時に爪付きナックルに変わった。

 このグローブは、俺が猫拳を使うときだけ武装する魔道具だ。

 猫が自由に爪を出し入れするように、ナイフのような爪が両手に現れる。


 燃える鶏冠を靡かせて、奴が来る。

 オラオラ鳥の突進は、クリムゾンボアより遅い。


「オラオラオラ~…オ?」


 突進を躱された巨大鶏が、一瞬キョトンとする。

 俺は無言で、その首の頸動脈を爪で切り裂いた。

 一撃必殺、技名ないから動脈斬りとでも言っとくか?

 オラオラ鳥の首の横から、噴水のように大量の血が噴き出した。


「ゲェェェ~ッ!」


 甲高い耳障りな叫びを上げて、巨大な鶏がドサリと倒れる。

 絶命すると同時に、燃える鶏冠の炎が消えた。


「うむ、見事じゃ。あとは血抜きじゃな」

「う、うん……」


 休む間もなく、俺はそこらの蔦をロープ代わりにオラオラ鳥を吊るし、頭と胴体をオサラバさせたのだった。



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