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第21話:事情聴取じゃなかった

 繁華街の暴走トラック男は、他にも余罪があったらしい。

 何年か前の女子大生殺人事件のことも自白したそうで、被害者の両親は遂に犯人を裁くことができると言って泣いていた。


「君があの男を気絶させてくれたから、繁華街では死者が出ずに済んだよ」


 警察から連絡がきたので行ってみたら、事情聴取じゃなくて感謝状を渡された。

 あいつがこちらへ向かってきたから正当防衛しただけですって言っておいたよ。



「来栖くん! ニュース見たよ!」

「犯人倒すなんて凄いね!」

「さっき来てたお客さんが『あの人ここのスタッフさんよね?』って聞いてきてたよ~」

「御堂さんをお姫様抱っこしてたな? このこの~羨ましい奴め!」


 出勤したら、バックヤードで声をかけられまくり、男性陣からは羨ましがられたりもした。

 繁華街には監視カメラがあり、暴走トラック犯も俺もバッチリ映っていたらしい。

 当然ながら御堂さんも映っていたわけで……チラッと見てみたら、なんか顔が赤い。

 多分、お姫様抱っこが恥ずかしかったかな?



「来栖くん、助けてくれたお礼に、今度食事を御馳走するね」

「え? そんな大したことしてないのに、いいんですか?」


 2人きりになったとき、御堂さんはコッソリそんな話をしてきた。

 二次会行きそびれたけど、一緒に食事の幸運きたかも?!



 ◇◆◇◆◇



「こちらで身体を鍛えておいて良かったのう」

「そうだね~、猫拳を習ってなかったら、刺されて死んでたかも」


 今朝も猫神様に稽古をつけてもらった後、ゆっくり朝ごはんを食べながらそんな話をした。

 朝食のメインは、クリムゾンボア肉のベーコンと、オラオラ鳥のタマゴで作るベーコンエッグ。

 先日俺が倒したオラオラ鳥のタマゴではないよ?

 森の中にはあちこちに巣があるんだ。


「みっ、みっ」

「あ? ミルクおかわり?」


 ルカが足元に来て、俺を見上げて話しかけてくる。

 多分さっきあげたミルクのおかわり希望だろう。


「シェーブルのミルクは良質な蛋白質とカルシウムを豊富に含むゆえ、聖夜も飲むとよいぞ」

「うん」


 シェーブルというのは、森の中に棲む真っ白い山羊に似た生き物。

 性格は大人しくて、世界樹の葉を差し出したら乳を搾らせてくれる気前のいいやつだ。

 山羊の乳は現実世界で1回飲んだことがあるけど、ちょっとアンモニア臭くて好みじゃなかったな。

 でも、神の島の山羊っぽい生き物の乳は、濃い牛乳みたいな味で臭みは感じず美味しい。


「このミルクでヨーグルトを作ろうかな」

「うむ、我やルカの分も頼む」

「猫はヨーグルト食べられるの?」

「砂糖を入れずにプレーンなら美味しく食べられるぞい」


 ヨーグルト作りは簡単だ。

 仕事に行くついでに、ヨーグルトの種菌を買ってこよう。



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