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第22話:ヨーグルト作ろう


「種菌ならこれがオススメね。来栖くん自炊してるの?」

「はい、コンビニ飯ばっかりだと味気なくて」

「良いことね。料理するのがストレスじゃないなら、自炊がイチバンだと思うわ」


 翌日、俺は出勤ついでに職場でヨーグルト種菌を買った。

 牛乳を発酵させてヨーグルトに変える種菌は、粉末状で小袋に入っている。

 種菌選びは薬剤師の御堂さんのオススメにしてみたよ。


「来栖くん明日休みでしょう? 私も休みだから食事に誘ってもいい?」

「はい。こちらは時間いつでもいいですよ」


 閉店後のバックヤード。

 御堂さんから食事のお誘いがきた。

 やったね! 御堂さんとお出かけだ!

 今の俺にとって時間は自由に使えるものだから、待ち合わせ時刻は御堂さんに決めてもらおう。


「じゃあ、ついでに映画も行ける? 今やってる映画、動物もののドキュメンタリーなの」

「動物もの良いですね~。ついでに行きましょう」


 食事のオマケに映画がついて、ぷちデートっぽくなってきたぞ。

 明日の予定を決めた後、男子更衣室へ着替えに行ったら、恨めしそうな顔した男性スタッフに迫られた。


「く~る~すぅぅぅ~」

「おわっ?! 何?!」


 あ~びっくりした。

 いきなりヌ~ッと背後から近付いて声かけるのやめてね。


「おまえ~、御堂さんとデートなのかぁ~?」

「えっと、一緒にゴハン食べて映画見に行くだけだよ?」

「世間じゃそれをデートと言うんだぞぉ~」

「そ、そうだね」


 うん、知ってる。


 恨めしそうな顔した男は、そのままショボーンと項垂れて退勤していった。

 動揺にショボーンとした男が2人、着がえを終えて去っていく。


 御堂さんは知的な雰囲気の綺麗な人で、ここの男性陣みんな密かに想いを寄せている女性だからなぁ。

 彼らは、俺が抜け駆けしたみたいに感じたようだ。

 でも多分、御堂さんはそんなつもりじゃないと思うよ?



 ◇◆◇◆◇



 異世界の自宅に帰った後。

 俺は広口瓶を手に、馴染みのシェーブルにミルクを貰いに行った。


「またミルクを貰ってもいいかな?」

「メエェ~」


 ミルクのお礼に、世界樹の葉を木の桶に入れたのをシェーブルの前に置く。

 シェーブルが満足そうに葉を食べ始める傍らに、小さな木の椅子を置いて座り、搾乳スタート。

 俺は派遣の仕事で酪農の牧場にも行ったことがあるので、乳絞りのコツは知っている。


「ありがとう、また来るよ」

「メエ~」


 500mlの広口瓶が満タンになったところで搾乳終了。

 俺はシェーブルにお礼を言って、広口瓶や椅子や空になった木桶などを異空間倉庫に片付けて帰宅した。


「今日も良質な乳を貰えたようじゃの」

「これでヨーグルトを作ってみるよ」

「みっ、みみっ」


 搾りたてのミルクは、搾乳時に広口瓶に取り付けたフィルターで濾過は済ませている。

 瓶は耐熱性なので、テーブルに置いてある加熱&冷却用魔導具で瓶ごと超高温殺菌 (UHT殺菌)をする。

 この魔導具は現実世界のヨーグルトメーカーをイメージして制作魔法で作ったもの。

 現実世界でパックごとセットしてヨーグルトを作れる家電を使ったことがあるから、イメージするのは楽だ。


 超高温殺菌は120~130℃で1~3秒加熱する方法で、牛乳の風味や栄養素をできるだけ維持しつつ、殺菌効果を高めることができた。

 加熱殺菌を済ませたら魔導具の設定を【冷却】に切り替えてミルクを冷まし、種菌を入れてかき混ぜたら、20~30℃の室温で20~24時間放置で完成予定だ。

 神の島の気温は25℃前後なので、この種菌がミルクを発酵させるのにピッタリの温度を保てる。


「この棚の中に入れて、試食は明日だね」


 牛乳とは違うミルクでどんなヨーグルトができるかな?

 種菌は牛乳以外(豆乳とか)でもヨーグルトを作れるタイプのもの。

 明日の完成を楽しみに待とう。



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