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第23話:手作りヨーグルトのお味は?


 シェーブルのミルクでヨーグルト作り、発酵開始から20時間経過した頃。

 買ってきた種菌はしっかり仕事してくれて、いい感じのヨーグルトが完成したよ。

 この種菌は乳酸菌「クレモリス菌FC株」が発酵する際に産生する「EPS(ねばり成分)」によって、独特のねばりやとろみ、酸味の少ない食感が出せるのが特徴だ。

 クレモリス菌は常温(20~30℃)で発酵するため、気温が25℃前後で安定している神の島では常温でヨーグルトが作れる。


「おお、これはクリーミーでまろやかで好みの味じゃ」

「みっ、みみっ」


 猫神様とルカはそのまま小鉢に入れたのを美味しそうに舐めている。

 酸味が少ないのは猫好みらしい。


「まずはそのままの味を~……うん、生クリームがそのままヨーグルト化したみたいな感じだね」


 俺もまずは素の味を知るため、小鉢に入れたのをスプーンで掬って口に入れてみた。

 市販の一般的なヨーグルトよりもトロッとしていて、濃厚なミルクから作ったそれは生クリームみたいな味がする。


「オリゴ糖とか蜂蜜かけたら美味そうだなぁ」

「それなら、小妖精に世界樹の花蜜を分けてもらうとよいぞ。クッキーを差し入れれば喜んで分けてくれるじゃろう」

「ちょっと行ってくる~」


 俺は現実世界でオヤツに買ったクッキーと蜜を入れる小瓶を手に、自宅を出て世界樹がある森の中央へ向かった。

 世界樹には5枚の花弁の薄紅色の花が咲いていて、緑の羽の小さい妖精たちが集まっている。


「こんにちは~」

「こんにちは聖夜、何か用?」


 俺は世界樹の実や葉をよく採りに来るので、既に小妖精たちとは顔馴染みだ。

 蜜を集める妖精たちのリーダーが、蝶のようにフワッと飛んで近付いてくる。


「クッキーをあげるから、蜜を分けてもらえる?」

「うん、いいよ。どのくらい欲しいの?」

「この小瓶を満たすくらい貰ってもいい?」

「OK」


 商談成立(?)して、俺は瓶の蓋を開けた。

 瓶を片手で持っていると、花の側にいた妖精たちがこちらへ飛んできて、小さな手と手の間に琥珀色の蜜玉を出現させる。

 妖精たちが両手を押し出すような動作をすると、蜜玉が飛んで次々に瓶の中に入っていく。

 それを見てたら、玉入れ競技を連想してしまったよ。

 瓶はすぐに満たされて、薔薇に似た甘い花の香り漂う琥珀色の蜜でいっぱいになった。


「ありがとう! クッキーここに置いとくからみんなで食べて」

「はぁ~い!」

「蜜が欲しかったらいつでも来てね」


 俺はクッキーが入った袋を世界樹の根元に置いて、瓶を異空間倉庫に入れて自宅へ向かった。


 作ったヨーグルトは小鉢ごと冷蔵庫っぽい魔道具で冷やしておいたので、帰宅する頃には程よく冷えている。

 それを取り出して世界樹の花蜜をかけて、スプーンで掬って口に入れたら、ふんわりと薔薇のような花の香りがする甘いヨーグルトになった。


「あ~……楽園の味……」


 上品な香りと甘さがたまらない。

 ほんのりした酸味も良い。

 もう市販のヨーグルトや蜂蜜が食えない気がするよ。



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