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第27話:自家製チーズ


 異世界の自宅に帰る前、俺はスマホでチーズ作りを検索してみた。

 料理のレシピサイトを色々見て、手軽そうなのを応用してみよう。



【ネットで調べた材料】

 牛乳…500ml

 酢…大さじ2(30mlくらい)

 塩…1つまみ(1gくらい)



 この島で手に入るものを使うから、牛乳の代わりにシェーブルのミルクにしよう。

 俺は空間移動で異世界の森の中に移動した。

 まずは世界樹の葉を摘んでいこう。

 瑞々しい葉を木桶いっぱいに摘んで、俺はシェーブルがいる場所へ向かった。


「メェ~」

「おはよう、ミルクを分けてもらえるかな?」

「メェェ~」

「ありがとう~、お礼はいつものコレだよ」

「メェ~」


 言葉は分からないけど、なんとなく意思疎通ができた気がする。

 絞りたて新鮮なミルクを手に入れたら、次は酢の代わりになる果実を採りに行こう。

 森の中を探せば、それはすぐ見つかった。



 ◆シキカの実

 青い実はレモンとカボスを合わせたような酸味。

 甘熟すると橙色になり、ミカンのように甘くなる。



「おはよう~、シキカの青い実、少し貰ってもいい?」

「いいよ~。蜜もあげる」

「ありがとう! じゃあこれお裾分けするよ」

「わぁ! クッキーだぁ~、ありがとう!」


 シキカの木には花が咲いている枝もあって、小妖精が蜜を集めながら受粉を手伝っている。

 小妖精ともすっかり顔なじみで、蜜を分けてくれた。

 ちょうど映画館の売店で買ったクッキーを持ってたから、お裾分けしておいたよ。


 あとは塩だけど、ストック切らしてたからついでに作ろう。

 塩は海に囲まれた島では比較的手に入れやすい調味料だ。

 俺は海辺まで歩いて行くと、水面に片手を向けて【分離】の魔法を使った。

 この魔法を使えば、海水から塩だけを取り出せるんだ。

 海水から分離した塩が、空中を進んで俺が手に持つ小瓶に集まる。

 塩が詰まった小瓶は、ミルクやシキカの実と同じく異空間倉庫に収納した。


「よし、これで材料は揃ったな」


 小鳥の囀りが響く森の中、俺は自宅へとノンビリ歩いて行く。

 空間移動なら瞬時に帰宅できるけど、この美しくてのどかな風景を眺めて歩くのが楽しかった。


「ただいま~」

「みっ、みみっ」

「うむ、おかえり」


 森の中の一軒家、木戸を開ければルカと猫神様が迎えてくれる。

 チビたちは箱の中で転げ回って遊んでいた。


「チーズ作りをしてみたくて、材料を貰ってきたよ」

「み?」

「ほお、チーズか。無塩タイプを作ってくれたら、ルカも食べられるぞい」

「うん、ルカと猫神様の分は無塩にするよ」


 話しながら台所へ行き、ネットで調べておいた製法でチーズ作り開始!



【作り方】

 ①鍋に牛乳を入れて中火で加熱、60~63℃の温度になるまで温める。

 ②火を止めたら酢を加え、ゴムベラで全体をゆっくりと10回ほど混ぜる。

 ③水分とポロポロとした白い塊に分かれてくるので、完全に分離するまで5分間ほど放置。

 ④ボウルの上にザルを置いてキッチンペーパーを敷き、③を注ぎ入れる。

 ⑤乾燥しないようにキッチンペーパーを折り畳んで包み、3時間放置。

 *ここで出てきた液体(ホエー)は捨てずに保管。

 ⑥垂れてくる水分をボウルに絞り出す。

 ⑦チーズの重さの1%の塩を加え、ゴムベラでボウルの底にすり付けるようにしてしっかりと混ぜる。

 ⑧4で出たホエーを大さじ1~2加え、なめらかになるまで混ぜて完成!



「ふむ、クリー厶チーズか。我の大好物じゃ」

「みみっ」

「いざ、試食タイム~っ!」


 初めて作ったチーズは、シェーブルのミルクのおかげて、市販のクリー厶チーズよりも濃厚でクリーミーに仕上がった。

 俺だけ小妖精がくれた蜜をかけて食べてみたら、もはや立派なスイーツだった。


「うまぁ~っ! もう市販のクリー厶チーズが食えないかも」

「はははっ、聖夜はそればっかりじゃな」


 感動のあまり思わず言ったら、猫神様に笑われちゃったよ。



 このレシピは、牛乳のタンパク質に酸性のものが加わると固まる性質を利用して作る方法だと書いてあった。

 シェーブルのミルクも豊富なタンパク質を含むので、牛乳代わりに使えたよ。

 レシピには「酢」と書いてあったにけど、シキカの実でも代用できた。

 クリームチーズのようにやさしい酸味となめらかなチーズを作るための大切なポイントは「温度」で、高すぎても低すぎてもダメらしい。

 適度な酸味となめらかさになる温度が約60℃だそうだ。

 60℃はお湯を沸かして泡が出てきたくらい、飲み物の温度でいうと飲むのにちょうどいい、少し熱い程度の温度だ。

(但し猫舌を除く)


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