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第36話:レム鹿の実のシキカ蜜漬け

 異世界の森の中。

 レム鹿の実を手に入れた俺は、途中でシキカ蜜を集めている小妖精たちのところへ寄った。


「こんにちは~、またシキカ蜜を分けてもらってもいい?」

「いいよ~」


 快諾する妖精たちにお礼のクッキーを渡して、蜜を貰って帰る。

 これで御堂さんにあげる物の材料は揃った。

 あとは自宅にある保存用の硝子瓶に詰めるだけだ。


「レム鹿の実は、普通の果実と同じく生食できるぞい。1日1個で貧血は改善されるじゃろう」

「10個あるから10日分だね。保存がきくようにしたいな。蜂蜜漬けやコンポートも作れる?」

「うむ」


 猫神様はレム鹿の実は生でも食べられて、貧血に効く栄養素を豊富に含んでいると教えてくれた。

 俺はそれにシキカ蜜を合わせることを思いついた。

 シキカ蜜は、ほんのりと柑橘系の味と香りがするから、フルーツとの相性がいい。



【レム鹿の実のシキカ蜜漬け】

 ◆材料

 レム鹿の実…10個(500g)

 シキカの花蜜…レム鹿の実が浸るくらい


 ◆作り方

 ①レム鹿の実から汚れを取り除く(分離魔法使用)

 ②清潔な保存容器にレム鹿の実を入れる

 ③レム鹿の実が完全に浸るくらいにシキカ蜜を入れる

 ④2~3日おいて完成!



「お~、漬け汁がロゼワインみたいな色になってる」

「上手くできたようじゃの」

「うん」


 初めて作った蜜漬けは、見た目も綺麗に仕上がった。

 レム鹿の実に、鉄分特有の匂いは無い。

 リンゴ似た、爽やかで甘酸っぱい香りだ。

 シキカ蜜の柑橘系の香りもする。

 漬け込みに使った蜜に含まれるビタミンCは鉄分の吸収をサポートするし、ブドウ糖や果糖は速やかに吸収されるので、朝の低血糖時の目眩に効くと思う。


「早速、届けてくるよ」

「うむ。行ってくるがよい」


 俺は瓶詰めを異空間倉庫に入れて、御堂さんが住むマンション近くの公園男子トイレ個室に空間を繋げる。

 異空間から様子を見ると、男子トイレには誰もいなかった。

 俺はまるで普通に用を足して出る人みたいに個室から出て、公園のベンチに座ってスマホを取り出す。


 現実世界の日時は、御堂さんが倒れた翌朝10時。

 御堂さんは店長から休むよう言われているから、家にいる筈だ。

 あんまり朝早く行くと迷惑だろうから、社会人訪問推奨時刻の朝10時に連絡した後に行こう。


『具合どうですか? 差し入れを届けたいんですが、今からそちらへ行ってもいいですか?』


 メッセージアプリで連絡したら、すぐに【OK】を掲げる犬のスタンプで返事がきた。


『近くまで来てるので数分で着きます』


 俺はまたメッセージを送り、御堂さんの部屋へ向かった。

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