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第39話:浮気チェック?


 異世界の自宅。

 仕事を終えて帰宅した俺は、ただいまを言って撫でようとしたら、ルカに匂いを嗅ぎまくられた。

 ルカファミリーの寝床として作った木箱の前で、俺はなんとなく正座になってしまう。


「みっ、みみっ」

「ルカ、なんでそんなに嗅ぐの?」


 ルカは特に俺のGパンの太腿辺りを、調べるように嗅いでいる。

 いつもは仕事から帰っても嗅がれたりしないので、俺はルカに聞いてみた。


「みっ」

「ふほほっ、まるで亭主の浮気をチェックする妻のようじゃのぅ」


 ルカは一瞬俺を見上げて短く鳴いて、また念入りに匂いを嗅ぎ始める。

 猫神様が、ソファで悠々と寝そべりながら笑って言った。


「浮気って……」

「聖夜よ、現実世界で動物を膝に乗せたのではないか?」


 ルカに嗅ぎまくられながら、困惑する俺。

 すると猫神様は大きな欠伸をした後に、ヒントをくれた。


「あ、そういえば御堂さんちの犬が膝に乗ってきたな」

「やはりのぅ。それじゃよ、ルカが嗅いでおる匂いは」


 それで俺はようやく嗅がれる理由が分かった。

 ルカは俺のGパンについたムスタの匂いを嗅いでいるんだ。

 俺は御堂さん宅でムスタに膝に乗られたのでモフった後、そのまま仕事に行って帰宅したから。

 着ている服にはムスタの匂いが残っていた。


「みみっ?」

「ルカは、なんて言ってるの?」

「『この匂いは誰?』と聞いておるぞ」


 通訳つきで猫と暮らしていると、こういうときに意思疎通が楽でいいね。

 その代わり、なに言ってるか分からないのを理由にごまかせないけど。

 俺は別にやましいことはしていないので、答えてあげた。


「会社の人が飼っているわんちゃんだよ。届け物をしに行ったら膝に乗ってきたんだ」

「みみっ、みっみっ」

「『私はまだ乗ったことがないのに』と言っておるぞ」


 ……なんか、通訳を通して浮気を問い詰められている気分になってきた。


「んみっ、みみっ」

「『聖夜はルカのだからね』と言っておるぞ」

「うん、なんとなくそう言われてる気がしたよ」


 もはや通訳されるまでもなく、ルカが何を言っているのか分かる。

 ルカは匂いを嗅ぐのをやめて、正座したままの俺の膝の上に乗ってきた。

 甘えにきたのかと思いきや、まるで自分の匂いでムスタの匂いを消すように、何度も頭や身体をすりつけてくる。


「……スリゴロって匂い付けだったのか……」


 俺は猫がスリゴロするワケを理解した。

 膝の上で伸び上がったルカは、今度は俺の胸の辺りに頭をすりつける。

 念入りな匂い付けだ。

 ルカは満足したのか、木箱の中へヒラリと飛んで戻っていった。


 でもこの服、この後洗濯するんだけど……

 俺もこれから風呂に入るので、せっかく付けた匂いが消えるけど、いいのかな?



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