「このバナナが熟したら、バナナケーキを作ろうかな。簡単だから来栖くんにもレシピを教えてあげようか?」
「この前ご馳走になった美味しいやつ、あれって御堂さんが作ったんですか?」
「そうよ。いつもまとめて作って冷凍保存しておくの」
あの美味しいカップケーキは御堂さん作だった。
手作りのお菓子を御馳走になったなんて、【御堂さんを愛でる会】の3人には言えないな。
っていうか御堂さんちに行ったことを知られただけで大騒ぎしそうだけど。
俺は3度目の訪問で、御堂さんの手料理を頂きながら美味しくお酒を呑んでいる。
ドライトマトのオリーブ油漬けとクリームチーズを生ハムで包んだオードブルが特に俺好み。
シェーブル乳のチーズはあるし、トマトに似た果実も森にあるから、異世界の材料で似たようなものを作れるかな?
鶏もも肉にローズマリーと塩胡椒を振ってグリルで焼いたハーブチキンもいいな。
オラオラ鳥の肉と森のハーブで似たものを作れるかもしれない。
「最近は貧血の眩暈が無いから、休みの日もスッキリ起きて色々作れるから楽しいわ」
ニコニコしながら御堂さんが言う。
レム鹿の実はしっかり効果があったようで、御堂さんは顔色も良く健康そうだ。
許せ、鈴木&佐藤&田中。
頑張って筋トレしているようだけど、貧血で倒れた御堂さんを運ぶという栄誉はもう無いかもしれない。
「パウンド型でもマフィン型でも、生地のレシピは同じなの。焼き時間が変わるだけね」
そう言って、御堂さんはレシピを教えてくれた。
【材料】
バナナ 200g
バター 80g
砂糖 80g
タマゴ 2個
ホットケーキミックス粉 150g
ナッツ類 トッピングとしてお好みで
【作り方】
①バナナをボウルに入れ、木ベラで潰す
②室温に戻して柔らかくしたバターを①に混ぜ込む
③砂糖を②に混ぜ込む
④タマゴをといて③に混ぜ込む
⑤ホットケーキミックス粉を④に入れ、粉っぽさが無くなるまで木ベラで切るように混ぜる
⑥型に入れ、クルミなどのナッツ類を散らし、180℃に予熱したオーブで焼く。
表面がキツネ色になり、竹串を刺してみて生焼けの生地が付いてこなければ完成
※パウンド型なら約30分、マフィン型なら約20分くらい
「ホットケーキミックス粉は、スーパーの製菓コーナーに150g入りの小袋セットが売ってるから、それを使うと量らずにサッと入れられて便利ね。うちにあるから1つあげる」
「ありがとうございます」
御堂さんはキッチンからホットケーキミックス粉が入った袋を持ってきて、俺にくれた。
これ以外の材料は揃っているから、バナナが完熟したらすぐ作れそうだ。
「また遊びに来てね。ムスタも待ってるから」
美味しくて楽しい時間を過ごした後。
俺は御堂さんとムスタに見送られながら部屋を出た。
マンション近くの公園は、夜更けということもあり誰もいなかった。
とはいえ、開けた場所でいきなり消えるのはやめておこう。
俺は木々の間に入り、夜闇に隠れて空間移動した。