コレットたちが風呂から上がってから、みんなで夜ご飯を食べた。
そして、俺は風呂に行く。
なぜかさっき入ったはずのモーフィまでついてきた。
本当にお風呂が好きらしい。
風呂から上がると、すぐにベッドに向かう。
湯冷めしたら風邪をひいてしまうからだ。
「シギはちゃんとお布団に入らないと駄目だぞ」
「りゃありゃあ」
「フェムもな」
「わふ」
フェムは俺の枕の上あたりに横たわることが多いのだ。
今日も俺の枕の上に横たわっていたが、促したら布団の中に入った。
「今日は寒いからな」
「もっも」
モーフィはいつものように、布団の中に入っている。
外の気温は寒くても、獣たちが一緒に寝てくれるので暖かい。
その夜は気持ちよく、ぬくぬくと眠ることができた。
次の日の朝、起きて食堂に行くと、ミレット、コレット、ステフ、チェルノボクがいた。
ミレットが困ったような顔をしている。ステフもミレットの近くで深刻そうな表情だ。
「どうした?」
「えっと、アルさん。それがですね」
「まだ雪がふってるんだよー」
ミレットの表情とは異なり、コレットは笑顔だ。
単純に雪が降っているのが嬉しいのかもしれない。
「長引いてるんだな」
「はい。吹雪も収まってないですし……困ってしまいます」
「除雪もしないといけないしな」
「除雪なら任せてください! 故郷でよくやっていたのです!」
ステフが力強く言ってくれる。心強い。
一方、チェルノボクは心配そうに、テーブルの上でふるふるしていた。
「ぴぎっ」
『困ったのだ』
フェムは魔狼たちが心配なのだろう。
だが、コレットを中心とした幼い者たちは元気だ。
「モーフィちゃん。あとで雪だるまつくろう」
「もっもー」
「シギちゃんもね」
「りゃあ!」
子供にとって、雪は楽しいものなので仕方がない。
『ちょっと狼小屋を見てくるのだ』
「俺も行こう。昨日狩った肉の分配もあるしな」
『助かるのだ』
肉の入った魔法の鞄を手に取った。
「フェム。どのくらいいる?」
『魔猪一頭もらえると助かるのだ』
「了解」
俺たちが外に出ようとすると、コレット、ステフ、モーフィとシギがついてくる。
シギはとりあえず俺の懐に入れる。
「ステフにコレット、今回は狼小屋の様子を見るだけだから、家でお留守番していなさい」
「わかったのです。師匠、お気をつけて」
「おお、ありがと」
ステフの物言いが大げさすぎて、少し面白い。
狼小屋は衛兵小屋のすぐ近くなのだ。
「コレットも行きたいなー」
「コレット、わがまま言ってはいけませんよ」
「あい」
ミレットがコレットを窘めて抱き寄せた。
それから俺に向かって頭を下げる。
「アルさん。すみませんが、村の様子も見てきてください」
「うん。任せておいて」
玄関から出ると、ものすごい吹雪だった。
昨日より激しくなっている。視界が真っ白でほとんど何も見えない。
俺の胸のあたりまで雪が積もっていた。
早速、俺は風を防ぐための魔法障壁を顔の周りに張る。
フェムとモーフィにもそうしてやった。そうしないと息苦しいし、会話も難しい。
ステフが大げさにお気をつけてと言ったのは、この惨状を知っていたからかもしれない。
「もっもー!」
モーフィが雪の壁に突っ込んでいく。
ものすごい勢いでかき分けて進んでいった。
「モーフィ助かる」
「もふー」
モーフィはどや顔でこちらを振り返る。そして再びかき分け始めた。
そのあとを歩きながら俺はつぶやく。
「本当に凄い雪だ」
『小屋の中だと全く気付かないものなのだな』
「ヴィヴィの魔法陣は優秀だから」
衛兵小屋には耐衝撃や耐熱の魔法陣が刻まれている。
嵐程度では、びくともしないのだ。
「村のみなさんも魔法陣描いてほしいって言ってたけど、ヴィヴィ描いたのかな?」
『わからないのだ』
描いているのなら安心だ。だが、描いてなければ少し不安である。
「あとで、魔法で除雪しないとだめだな、これは」
『火炎魔法で溶かせばいいのだ』
「地面がドロドロになるし、溶けた後が凍ってカチカチになるぞ」
「わふう」
モーフィが道を作ってくれたおかげで苦労なく狼小屋に到着できた。
狼小屋にはバネで自動で閉まる簡単な扉がついている。
体で押せば開く程度の強さの扉だ。
その前に雪が積もって、動かなくなっていた。
「閉じ込められてそうだな」
『大変なのだ』
魔狼たちも、フェムの到着に気づいたのだろう。
「わふわふわふ」
小屋の中で鳴いている。
俺は魔法を利用して狼小屋の扉付近を除雪した。
重力魔法を使えば、除雪は簡単だ。
俺たちが狼小屋の中に入ると、魔狼たちが群がってくる。
「わふわふ」「わふ」
「もっ!」
魔狼たちは尻尾を振って大喜びだ。モーフィも狼たちに群がられて嬉しそうだ。
「きゃふきゃふ」
「りゃ!」
子魔狼たちが元気に俺の足元にまとわりついた。シギと遊びたいのかもしれない。
シギも俺の懐から出てパタパタ飛んで子魔狼たちと遊び始めた。
「フェム、魔狼は全員いるか?」
『大丈夫なのだ。全員いるのだ』
「それはなにより」
魔狼たちは、いつもは水飲み場まで飲みに行っている。だがこの雪では難しそうだ。
俺は魔法の鞄から、大きめのたらいを出す。
そこに魔法で雪を溶かして、水にした。それからぬるま湯程度まで暖める。
そうしておいてから、魔猪をフェムに渡す。
『ありがとう』
それからフェムは、
「がうがう!」
「わふ」
「がう!」
魔狼たちに訓示をしてから餌を分配していった。
きっと、吹雪いているから、大切に餌を食えとか言ったに違いない。
だが、魔狼たちはバクバク食べる。
なにやら、魔狼たちはお腹を空かせていたようだ。仕方がないことである。