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415 温泉に入ろう

 俺は魔狼たちに言う。


「シギと遊んでくれてありがとうな。シギは温泉に入ってくるから、また今度な」

「わふ!」「きゃふきゃふ」


 魔狼たちは理解してくれたようで、きちんとお座りして一声鳴いて見送ってくれる。

 だが、子魔狼たちはよくわかっていないようで、俺の足元にまとわりついてきた。


「よーしよしよしよし」

「かわいいのじゃ」

「うむ。いつもシギショアラと遊んでくれてありがとう」


 俺が子魔狼を撫でると、ヴィヴィとティミショアラも撫で始める。


「シギショアラの叔母さんが、おやつをあげよう」

 そういってティミが魔狼たちに肉を配り始めた。

 魔狼たちは大喜びだ。


『ありがとうなのだ』

「お礼だから、気にしなくてよいのである」


 フェムがお礼をいうと、ティミは嬉しそうにほほ笑んだ。


「おっしゃん、はやく温泉入りにいこー」

「ああ、そうだな」


 衛兵小屋に入ると、ミレットが気づいて走ってきた。


「アルさん、お帰りなさい」

「ただいま」

「もう、エルケーの方は大丈夫なんですか?」

「とりあえずは。まあ、明日また行くんだけどな」

「そうなんですねー。夜ご飯はこっちで食べるんですよね?」

「その予定だが……」

「やった。夜ご飯張り切って作りますね!」

「ミレット、ありがとう」

「わふぅ!」「もっも」「ぴぎぃ」


 獣たちもミレットのご飯が食べたいのだろう。大喜びだ。


「これっとたち、おっしゃんと温泉はいるんだー」

「あら、楽しそう」

「お姉ちゃんもはいるー?」

「わ、わたしは……」

「コレット、ミレットを困らせたらだめだぞ」

「えー」


 コレットは頬をぷくーと膨らませた。


「ももぅ!」


 モーフィがせかすように、俺を後ろから頭で押してきた。

 本来巨大なモーフィの力は、小さい状態でもとても強い。


「押すな押すな。わかってるモーフィ。温泉に早く入りたいんだよな」

「もぉ」

「じゃあ、ミレット、俺は温泉に入ってくる」

「はい! ごゆっくり!」


 脱衣所につくと、フェムとモーフィ、チェルノボクが浴場へと入っていった。


「りゃっりゃーりゃー」

「シギたちは服を脱がなくていいから、こういう時は便利だな」

「りゃあ?」

「コレット、自分で服脱げるか?」

「脱げるよー」


 ゆっくりだが、コレットは自分で服を脱いでいく。


 シギは俺とコレットを待ってくれるようだ。俺たちが服を脱ぐのをじっと見ている。


「シギ、待たせたな」

「シギちゃん、これっとが洗ってあげるね」

「りゃ!」


 すべて服を脱ぐと、コレットはシギを抱っこして、浴場へと走っていった。


「走ったら転ぶから気をつけなさい」

「はーい」


 俺が中に入ると、獣たちはきちんとお座りして待っていた。

 俺がいつも体を洗う場所の近くに、右からフェム、モーフィ、チェルノボクの順で並んでいる。


「フェムたち、コレットを洗うまで少し待っていてくれ」

「わふ」「も」「ぴぎぃ」


 俺は先にコレットから洗うことにした。

 コレットは獣たちと違って毛皮がないので、あまり待たせると風邪をひいてしまう。


「コレット、頭を洗ってあげよう」

「おっしゃん、ありがとー。これっとはシギちゃんを洗ってあげるねー」

「それは助かる」「りゃあ」


 俺はコレットの頭を洗う。女の子なので丁寧に洗っていく。

 コレットはシギのことをわしわし洗っていた。


「シギちゃん、かゆいところあるー?」

「りゃっりゃっ!」

「ほら、シギちゃん羽バタバタさせないの」

「りゃあ」


 シギは嬉しそうにはしゃいでいた。そこにチェルノボクがやってくる。


「りゃ!」

「ぴぎぃ」

 目の前に来たチェルノボクをシギが捕まえる。そして、洗い始めた。


「りゃありゃあ」「ぴぎぴぎっ」


 シギはつたない手つきで一生懸命洗っていく。チェルノボクも嬉しそうだ。

 フェムは大人しくお座りしているが、モーフィは待っていることに飽きたのだろう。

 フェムの背に乗って、俺の髪の毛をハムハムとかみはじめた。


「モーフィ、俺の髪の毛は食べられないぞ」

「もにゅ?」


 モーフィはきょとんとしている。仕方ないので、俺はコレットをどんどん洗っていった。


「よし、コレット、湯船に入っていいよ」

「ありがとー。おっしゃんの背中ながすよー」

「風邪ひくから入っておきなさい」

「はいー。いこ、シギちゃん。チェルちゃん」

「りゃあ」「ぴぎぃ」


 シギは元からそんなに汚くない。そもそも洗う必要がないかもしれないぐらいだ。

 チェルノボクも同様だ。丸くてすべすべしているので、湯船に入る前に洗わなくてもいい。

 シギもチェルノボクもすぐに湯船に入らないのは俺たちの真似をしているだけなのだ。


「コレット、溺れないようにな」

「わかったー。でも、これっと泳ぐの得意なんだよー」

「そうか、それでも気を付けてな」

「うん、わかったー」


 もし仮に溺れてもチェルノボクが教えてくれるから安心だ。


「モーフィ少し待っててな」

「もにゅっ」

 相変わらず俺の髪の毛をハムハムしているモーフィを待たせて、フェムから洗うことにした。

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