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第10話 所属する部活動を決めよう!

 祐希はとても悩んでいた。どの部活に所属しようかと。


 祐希たちが通う学校は比較的自由な校風でウリだ。それはその分、学力的にもレベルが高いものを要求されることを意味しているのだが、それはともかく。ともかくだ。


 部活動についても同様で、かなり生徒の好きにしても良いらしく。


 部活動勧誘の掲示を見ていると「サッカー部」「バドミントン部」「科学実験部」「漫画同好会」「お笑い同好会」と、大学のサークルのような文字列が並ぶ。


 中にはクセのある名前も。


「この『部』と『同好会』の違いってなんだろう?」

「あー、それは多分認可の違いじゃないかなあ。学校に認められてて部費も出てたら『部』、認められてなくて部費が出てないと『同好会』だと思う」


 祐希の疑問に的確に答えたのは横にいるドワーフのホルティス。入学して最初に祐希が作ったである。


 ずんぐりとした見た目に似合うその気質の良さと祐希を一切恋愛対象に見てこない気楽さで仲良くなった。


 放課後の部活動見学の時間を一緒に過ごそうと約束していたのだ。


「中学の時はバド部だったから、高校で続けるのも悪くないけど……」

「迷ってるなら他のとこも見てみたら? テニスとか、バスケとか」


 中学の時、祐希は確かにバド部に所属していたがあまり厳しくもなかったために、部活の仲間としょっちゅうサボったり遊んだりしていたことを思い出す。


 あれはいい思い出ではあるが……。


「別に多少サボるなら文化部でもいいな」


「漫画同好会」なんて、それこそ漫画読み放題で楽じゃないのだろうか。いや、もしかしたら描いたりもしなくちゃいけないのだろうか。


「吹奏楽部は?」


 ホルが勧めてくる。祐希には当然の如く楽器経験は皆無だ。


「吹奏楽なんて文化部の中で一番の体育会系だろ」



 一つずつ上から文化部を見ていく。いくつもの部活が並んでいる。


「演劇部は?」

「めっちゃ男役として重宝されそうだけど演技はなぁ」


「競技かるた部は?」

「ここにも百人一首ってあるのか……いや、なんでもない。ちょっと馴染みないなあ」


「思想研究同好会は?」

「名前からして怪しすぎないか!?」


 なかなか祐希の心に刺さる部活が見つからない。かといって、帰宅部も面白くない。そうやって掲示板の前で頭を悩ませる。


「ちなみにホルちゃんはどれ入るの?」

「私は……陸上部かな。走るの好きだし」


 ふふーん、と誇らしげに語るホル。やはり運動部に入るべきなのかなあ、と悩んでいたところに気になる二つのビラが目に入った。


「なんだこれ、?」

「あー。それは……」


 ビラの紹介文を読んでいく。この内容をまとめてみるとこうだ。


 男性は社会的に不利な立場に行われていることが多く、その例はノルマを課されて行われる徴精制度を代表として枚挙にいとまがない。その分男性は結婚可能人数に拡張性が設けられているものの……云々。とにかく長々と社会問題に対する提言が書かれている。


「なんか堅苦しいな。っていうか、女の人って結婚可能人数八人じゃないんだ」

「普通に一人だよ。そんな数の男性と親密に、とかまず無理ゲーだし。そんなの実現したら節税とか、問題起きまくりだろうし」


 世の中面倒臭いなあ、と呟く祐希。でもそこにホルの横槍が入る。


「でもこんなこと長々と書いてるけどさ。実際のところ男保会男性保護同好会ってただの男子ファンクラブだよ?」

「え?」


 聞いてみると、どうやら同好会から、部費をもらえる部になるために看板だけは大層にしているが、その実態は数少ない男性有名人の世相調査と題したSNS監視。ただのファン活動を行っているオタク系の団体らしい。


「もしかして俺も対象だったりする?」

「君、この学校に来てから何回女子にアプローチされた?」

「え……2回かな?」


 奏音のことを数に入れるか迷ったが、イリナは確定だろう。ほぼ襲われたみたいなもんだが。


「そんなに少ないのか。君が遠巻きにヒソヒソと噂話される程度に済んでるのは、男保会だんほかいが男性が不登校になったらいけないから君にトラウマを植え付けるようなことをするな、と。そう声明を出しているからだよ」

「マジ?」


 そんな話、前にも聞いた気がする。いや、それはありがたいと思う反面で。


「余計なことやってくれてるな」

「やっぱり、君はそう言うんだ」


 奏音の時のような純真でうぶな可愛い女子がアプローチに来るなら歓迎だ。正直、祐希からすると遠巻きに噂の対象にされる方がはるかに不愉快だった。


「男保会にクレームを言いにいくか?」

「そうなったら嬉しい悲鳴が校内に轟くだろうね。そんな事したら……」

「したら、なんだよ」

「男保会はあっという間に君のファンクラブになるだろうね」


 世相的に男性は保護されるべき対象だ。だから丁重に扱うべき。男性側もその均衡を快適なものだとして保ってきたらしい。しかし、祐希はそれに少しのモヤりを感じていた。


 先ほどホルティスのことを「恋愛対象としてみてこないから気楽」とした。そもそも友達としての気楽さと、恋愛特有の緊張感は別に考えるべきだ。そう祐希は考えている。


「よっしゃ、様子見に行ってみるか。男保会」

「本当に言ってる?」


 またホルが呆れた声を出すのだ。

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