かくしてパッド捜索隊の一員に強制入隊させられた俺は、生徒会室で双子姫と共に、作戦会議を開催していた。
「そ、それじゃ今から『下着ドロボウさん捕獲計画』の作戦会議を始めますっ!」
どこから取り出してきたのか、『さくせん会議』と女の子らしい丸っこい字で書かれたホワイトボードの前で、司会進行を務める妹ちゃんが口火を切った。
途端に会長席でふんぞり返っていた古羊が異を唱える。
「違うわよ洋子。『捕獲』じゃなくて『血祭り』計画よ。必ずヤツの
「だから発言が乙女じゃねぇんだよなぁ……」
「メイちゃん……」
ギリギリと奥歯を噛みしめる古羊。
その表情は乙女というよりバーバリアンである。
おいおい1号かい?
それとも2号かい?
「な、なら『下着ドロボウさんをこらしめようっ!』会議で……どうかな?」
「んん~……まぁ、いいわ。ソレでいきましょう」
どうやら及第点を貰えたらしい妹ちゃんが、ほっと胸を撫で下ろした。
そのせいで制服の上からでも分かるほど豊かな胸元が上下する。
う~ん、この半分でいいから姉の方に分けてあげたいっ!
ほんと
神様って残酷だなぁ、と思いました、まるっ!
「大神くん? 余計なことは考えなくていいからね? 殺すぞ?」
「サーセンっ!」
ニッコリ♪ と圧の強い笑顔で釘を刺される。
ねぇ、なんで俺の考えていることが分かるの?
エスパーなの?
エスパー芽衣さんなの?
フジオぉぉぉぉぉっ!
「お、落ちついてメイちゃん? ね?」
「……チッ。わかったわよ。でも、次はないわよ?」
「イエス・ボスっ!」
よこたんに窘められ、しぶしぶといった様子で引き下がる古羊。
何気に妹の言うことはよく聞くんだよなぁ、コイツ。
まぁその分、無茶振りもよくするけど……。
なんて事を思っていると、よこたんが場をしきり直すように「で、ではっ!」と可愛らしく声を張り上げた。
「下着ドロボウさんをこらしめる、何かいい案がある人は、どしどし言ってください!」
「そうねぇ。今思いつく限りで1番堅実的な案は、この辺り周辺に住む野郎共のキ●タマを全員1人残らず潰して周ることくらいかしら。女の子らしく」
「女の子らしくとは一体……?」
ドン引きである。
彼女には1度、辞書で『女の子』という単語に赤線を引いて来てもらいたい所だ。
なんでそんな物騒な発想が出てくるの?
ヤーさんなの?
「そもそも犯人が男だって決めつけるのも、どうかと思うね。俺は」
「ど、どういうこと、ししょー??」
「いや、もしかしたらさ? 犯人は女の子が大好きな女の子なのかもしれないし。何ソレ、最高かよ?
「急に祝福し始めたわよ、この男……?」
「ししょー……」
何故か2人からヤベェ薬をキメている奴みたいな目で見られる。
もしかしたら惚れられたかもしれない。
「でもなんで女の子が女の子の下着を盗むのよ? 意味が分からないわ」
「そ、そうだよ。他人の下着なんか盗まなくても、自分の下着があるよね?」
「それは言わぬが
「「???」」
よく分からない、と言った風に2人一緒に首を傾げる双子姫。
彼女たちは知らないのだ。
世の中には、特殊な性癖をもったレディー達が居ることを。
そして、そんな彼女たちを見て
ちなみに『尊死』とは、ガンや脳卒中に
「なら大神くんは他に妙案があるの?」
「う~ん……あっ! おとり作戦とかどうよ?」
「「おとり作戦?」」
コテンッ? と首を傾げる2人に、俺は「おうよっ!」と頷いてみせた。
「もう1度、今度はあえて胸パッドを女子更衣室に放置して、俺たちはロッカーに隠れる。んで、犯人が盗みに現れたところを一網打尽っ! どうよ? 中々に妙案じゃね、コレ?」
「バカね。それだと四六時中、ロッカーの中に入って監視しなきゃいけないじゃないの。その間、授業とかどうするのよ?」
「あっ、そうか……」
「な、ならビデオカメラを設置するとかは? それならボクたちが授業中でも、関係ないよね!?」
「ダメよ洋子。そのビデオカメラはどうやって用意するのよ?」
「だよね……」
しょぼん……と、古羊の架空の犬耳とシッポが力なく垂れる。
さて、万策尽きたワケだが?
「あぁ~っ!? じゃあもう、どうするよ!? この際、パッドの中にGPSでも仕込むか? んで、盗んだ後を追いかけるか?」
もう半ばヤケクソ気味に思いついた案を口にした。
その瞬間。
――パチンっ!
古羊が小気味よく指先を鳴らした。
「ソレ、採用」
…………はい?