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第5話 日本文学衰退会

 日本文学振興会という団体がある。

 これは、一般的に芥川龍之介賞、直木三十五賞を主催していることで知られる団体だ。


 2002年下半期(2003年1月発表)の直木賞が「該当作品なし」だったことに憤った有志が、立ち上げたのが本屋大賞。


 2006年下半期(2007年1月発表)の直木賞が「該当作品なし」となって以降は、直木賞は、毎回受賞作を選出し続けているものの、圧倒的に読者が本選びの頼りとするのは本屋大賞であろう。


 芥川賞・直木賞関係でおそらくもっとも盛り上がりを見せたのが、2015年上半期にお笑いコンビ・ピースの又吉直樹が『火花』で芥川賞を受賞した時だろう。

 その頃から、どんどんとオールドメディアが下り坂46になっていき、芥川賞・直木賞は今やオワコン。日本文学振興会も日本文学衰退会などと揶揄される始末だ。


 芥川賞・直木賞の下り坂46の原因がまさしくタレント作家を相手にしないことであろう。

 近年、芥川賞・直木賞を複数回候補になっているタレント作家といえば、アーティストの尾崎世界観(クリープハイプ)とアイドルの加藤シゲアキ(NEWS)。

 この両名に関してだけは、振興会も一目置いているのか度々候補に入れるけれども、昨今のちょっと売れたタレントが猫も杓子も本を出す状況のなかで、両名以外は相手にされていないという印象がある。

 たしかに、又吉直樹の『火花』のような圧倒的な作品がタレント作家によって生み出されているのかというと疑問を抱くものの、やはりタレント作家をせめて候補には入れないと、盛り上がらないというのが筆者の意見である。

 芥川賞・直木賞も、いまや一部の本読みしか参考にしていないのではないか。

 特に、日本大学の理事長(林真理子)などの選考委員が、「日本人がなんで外国人の物語を書くのか?」的な排外思想を選考に持ち込むことによって、オワコン化に拍車がかかっている。


 【追記】 ※2025 年7月10日

 林真理子選考委員についてですが、

 WEBサイト『直木賞のすべて 選評の概要 第160回』(https://prizesworld.com/naoki/sp/senpyo/senpyo160.htm)によると、直木賞候補作・深緑野分『ベルリンは晴れているか』の選評で、(以下、引用)


> 私は以前の候補作「戦場のコックたち」について、「どうして他国の人を書かなくてはならないのか、という疑問が最後まで残る」と感想を持った。が、今回はその異和感がなかった。それは深緑さんが「戦後」という普遍的なものを見事に描いたからだ。


(引用終わり)

 引用のように述べており、「なぜ日本人が外国人の物語を」的指摘について反省しているものと思われます。

 林真理子選考委員が、「なぜ日本人が外国人の物語を」的指摘をした事実はなくなりませんが、後に、外国人を描いた物語を高評価したことについても言及しないとフェアではないと思うので、追記させていただきました。


 【以上。追記終わり】


 もっとも、選考委員は振興会(実質的には文藝春秋社)が候補にしてきた作品の中から選んでいるのに過ぎず、タレント作家を候補に入れて賞を盛り上げようとしない件に関しては選考委員には責任はないかもしれない。


 グレゴリー・ケズナジャットが芥川賞を獲得する日も近そうだ。きわめて、排他的な今の芥川賞・直木賞を打破するためにも、非日本人の日本文学参入促進がのぞまれる。

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