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第8話 ヘンリー・ダーガーについて

 筆者がヘンリー・ダーガーのことを知ったのは、恩田陸の小説『三月は深き紅の淵を』(講談社)を読んだときだ。


 ヘンリー・ダーガーは、アメリカでその生涯において誰にも自分が書いた物語を人に見せることなく、そのままにこの世を去った小説家である。ギネス記録にこそなっていないけれども、おおよそ人類が書いた中でもっともボリュームの多い物語(『非現実の王国で』など)を記したと目されている。


 ヘンリー・ダーガーの逸話で格好良いのは、ダーガーが入院した際、アパートの大家さんに「部屋にある荷物はどうする?」と聞かれ、「捨ててくれ」と言ったというものだ。


 つまり、ヘンリー・ダーガーは、生きているときにも誰にも小説を見せなかったし、そして死後に評価されることも拒んだのだ。

 (ところが、大家さんが機転を利かせたため、ダーガーの意思とは裏腹に、彼の著作は後世に伝わることとなった。もっとも、はたして、ダーガーはそれを望んだのかは不明)


 筆者もネオページ作家の端くれとして、やっぱり書いたら見せたいし、あわよくば後世にまで残りたいと思うもの。


 ヘンリー・ダーガーはただ純粋に物語の世界を築きあげるためだけに、創作にのめり込んだのだ。だから、ダーガーは完全純粋創作者とでも言おうか。

 決して、食うために書いている作家を不純だと言いたいわけではないのだけれど、ネオページで作品を公開している筆者は既にダーガーになる資格を失っている。


 でも、もしかしたら、誰にも見せず、賞にも送らず、投稿サイトにも投稿せず、小説を書いている現代のヘンリー・ダーガーがもしかしたら、どこかに、日本に?アメリカに?存在しているかもしれない。


 ダーガーの場合は、大家さんの機転によって名前が残ったけれども、決して公開されず、闇に葬られていく物語というものが、もしかしたら、世の中には存在しているのかもしれない。


 現代のヘンリー・ダーガー、きっと存在するのだろうなぁ・・・


 さあ、読者諸君!ネオページ作家の諸君はダーガーにはなれない!

 ならば、不純でも構わない。反ダーガー的に作品を公開していこうではないか!


 いや、するしかない!!


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