爆笑問題・太田光といっても、もはや、あまりピンと来ていただけない時代かもしれない・・・
太田光さんはお笑いコンビ・爆笑問題(太田、田中裕二)のボケ担当、ネタ作成者である。
日本のお笑い界といえば、やはりダウンタウン(松本人志、浜田雅功)が一時期「天下」をとっていた印象があり、それに比べると爆笑問題はあまり「天下人」の印象はない(手広くやっている印象)。
お笑いファンの中で賛否両論だったのが、ダウンタウン松本人志監督による映画である(『大日本人』、『しんぼる』、『さや侍』、『R-100』)。
ちなみに、筆者は松本監督の映画について肯定的なのだが、世間的、映画評論的には大失敗の烙印(らくいん)を押されている。
そして、「映画の松本」、一方で、「小説の太田」である。
太田は、爆笑問題名義も含めて、時事的な読み物を多数出版しており、そちらは好評という印象なのだけれど、いかんせん小説の評判がイマイチ・・・
太田は小説として『マボロシの鳥』(新潮社)、『文明の子』(ダイヤモンド社)、『笑って人類!』(幻冬舎)の3冊を現在のところ出版しているが、世間での評判は芳しくない(筆者は愛好している)。
また、『マボロシの鳥』を出版した新潮社とは、後に「週刊新潮」に掲載された記事をめぐって、原告と被告の関係になったという因縁もある。いかに、「週刊新潮」編集部に独立性があろうと、太田が新潮社から刊行した小説が立て続けにベストセラーになっていれば、当該記事は書かれなかった可能性もある。
それはともかく!
今回、紹介する名言はこちら。
太田光『マボロシの鳥』(新潮社)P.180- より
> 「⋯⋯この世で一番幸福なことは、誰かに必要とされることだ⋯⋯」
>(中略)
>「キミは⋯⋯花を見て、なぜそれが綺麗だと思えるか、わかるかい?」
>「⋯⋯なぜって、それは⋯⋯」
> また、絶句した中年男にチカブーは言った。
>「その花に、自分が必要とされているって思えるからだ。⋯⋯花に自分が必要とされてる。なんて、おかしな言い草だけどな。本当にそうなんだ。
引用終わり
太田は画家のピカソの作品をよく引き合いに出すけれども、例えばピカソの名画があったとして、その名画自体は素晴らしい。ただ、その
もはや、テレビのお笑いネタ番組なんて誰も見ていないのかもしれないけれど、バラエティ番組で叫び、暴れ回っている太田からは想像のつかないロマンチックな考えである。
この考えに関して、太田は一貫している。
太田は花に例えているけれど、一番ネオページ読者にピンと来るように述べるならば、
この世界に何か素晴らしいと思えるものが一つでもあるとするならば、その人間はこの世界に必要とされている。
例えば、精神状態が悪化し、うつ病のようになってしまい、何にも心を動かされることがなくなってしまったとしよう。
そうすると、絶望的になり、この世界に自分なんて必要ないと悲観的にもなってしまうだろう。
もしかしたら、筆者もあなたも、あなたの身近な人もそうなってしまうかもしれない。
そんな時、音楽、絵、漫画、映画、お笑い⋯⋯なんでもいい、何か心を刺激してあげよう。
高校卒業後、病院にも大学にも行っていない時期があったけれど、当時流行っていたミュージシャンの「YUI」の歌に救われた。
精神病院に入院した時に、差し入れてもらった漫画に心を動かされた。
【ここから、閲覧注意。※刺激的な内容が含まれます】
相模原障害者施設殺傷事件という世間を震撼(しんかん)させた犯罪があった。
この事件で刑が確定した犯人は、「意思の疎通のとれない重複障害者は生きる価値がない」と動機を語った。
これに関して、当時、太田光がTBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」で言及した時のことを昨日のことのように覚えている。筆者は涙を流しながら聞いた。
彼はおおよそ次のようなことを述べた。
たしかに、自分の力だけでは生きられない障害者の方はいる。けれども、障害者の方々が施設のスタッフや家族の手助けを必要としているということは、施設のスタッフや家族もまた障害者の方々を必要としているのだ、と。
太田はしばしば炎上する。旧ジャ◯ーズ事務所問題や、旧統◯教会問題など、社会問題となった団体を擁護したようにとられる言動をとることもある。
太田は全員救いたいのだ。
太田は被害者にももちろん同情している。ただ、加害者にも人権はある、と太田の考え。
太田は全員救いたい。
筆者が推測するに、彼は、
そして、それは他人の命を尊重することでもあり、世界平和に繋がる。
彼が言っているのは所詮(しょせん)綺麗事(きれいごと)かもしれない。実際的には現実では貧困や多死社会など厳しい問題が蔓延(はびこ)っている。
そんななかで、太田が書くファンタジーやSFはまるで綺麗事だ。事実、残念ながら一般的な評価は芳しくない。
ただ、太田なりに小説に思いを込めて未来の人たちに訴えたいのだと思う。
爆笑問題が所属する芸能事務所「タイタン」。ほとんど爆笑問題が立ち上げたといっても過言でない同事務所の社名「タイタン」は、カート・ヴォネガットの小説『タイタンの妖女』に由来する。
太田はヴォネガットだけでなく、多くの作家の著作に親しんでいる。
また、太田光の父はかつて文学青年だったらしく、あの太宰治に自分が書いた小説を直接見せに行ったことがあるらしい、と太田は「爆笑問題カーボーイ」で述べていた。
もしかしたら、父の夢を自身が果たそうとしているのかもしれないし、純粋に小説への憧れがあるだけなのかもしれない、と判然としないけれども、「太田の小説はつまらない」という定説はきっといつか覆ると筆者は推測している。
筆者の叫びが読者の方々に届くかどうか分からない。
筆者の創作を素晴らしいと思ってもらえたら嬉しいけれど、もし、つまらないと思ったとしても、読者の皆さん、あなたは素晴らしい!!!!