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第39話 【閲覧注意】殺生(せっしょう)


 【閲覧注意】※本エピソードでは、多くの日本人が忌み嫌うある昆虫(いわゆる「G」)が出てきます。



 筆者がプロ野球観戦をした日のこと。(どこのスタジアムか具体的なことは伏せる)


 筆者は球場の内野席の一番うしろ、壁際でしかも通路側の席で観戦をしていた。


 試合はもう中盤から終盤にかけて。通路を挟んで隣のブロックが何やら騒がしい。男女3名、試合とは関係のないところでキャーキャー悲鳴をあげていた。


 まさしく、「G」が出没したのである。


 筆者もGだけでなく昆虫全般が大の苦手なので、とりあえず地面に置いてあったリュックを避難させたのだが、試合そっちのけで気が気ではなかった。


 Gは通路を隔てて隣のブロックの男女3名の地面をウロウロしていたらしい。筆者も視界に捉えることが出来た。


 そして、Gは筆者が座るブロックのとょうど壁のところに張り付いて停止をした。


 筆者は躊躇(ちゅうちょ)なく、靴を脱ぎ、そして、Gがとどまっている壁に靴底を叩きつけた。


 もし、まだ生きていれば、筆者はモゾモゾしている昆虫を目にしたくないので、女性に「生きてますか?」と聞いた。女性は「死んじゃいました」と言った。


 と、まあ、これにて、一件落着だった。

 実は、野球の試合がちょうど盛り上がっているところで、筆者がその日応援していたチームのランナーが二人出ており、筆者はすぐに野球観戦のマインドに戻った。

 そして、チームは見事、追加点を得ることが出来た。その日、そのチームは勝利。


 それはさておき、「死んじゃいました」と言った女性とは別の女性が「逃がしてあげたかったなあ」と言っているのを耳にした。


 まあ、筆者のブロックまで侵入してきたので、生殺与奪権(せいさつよだつけん)の管轄は筆者にあると思うのでとやかく言われる筋合いはない。


 ともあれ、あれだけ、騒いでいたのに、逃がしてあげたかったとは・・・


 「無益な殺生は・・・」などと言うのだろうか?


 筆者は野球に集中したいから申し訳ないが、Gには死んでもらった。


 人間の都合で、多くの動物は殺生されている。

 フードロスに象徴されるように、せっかくいただいた命を廃棄している現実もある。


 山から降りてきたクマやイノシシに至っては駆除までしている。(Gは命に関わらないとでも言うのだろうか?筆者にとっては命より自由が大切で、Gによって野球観戦の自由が妨げられていた)


 筆者からすると、その女性は綺麗事にすぎる、と思う。


 まだ、精進料理などエネルギーに最低限必要な食事をしている仏教徒の修行僧か何かに指摘をされるのなら、わかる。


 野球観戦をし、むやみに飲み食いをしている俗物が、「逃がしてあげたかった」とは・・・


 そんなに惜しいことをしたのならば、亡骸を持っていってお墓でも作ってあげれば良いのだ。


 まあ、筆者にはその感覚が一切理解できない。

 筆者は理解しかねる価値観にも寄り添いたい性格であるが、これに関しては理解できるようにつとめる必要もないであろう。

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