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第57話 読まなかった本


 読者の皆さんにも思い入れのある本(書物)というのはおそらくあると思う。


 筆者にも、読んだうえで思い入れのある本というのは当然に沢山ある。


 一方で、思い出の本がある。


 あれは、小学生の頃だったか、中学生の頃だったか。


 自分で本を買うということがそれなりに習慣化される前のことである。


 一冊の単行本、海外のファンタジー小説の本を買った。


 タイトルは定かでない。


 表紙が青い色で、ドラゴンの絵が描かれている本だ。


 表紙が青く、ドラゴンが描かれている本というのは、いくつもあり、もはや、あの本がどれだったのかを特定することは難しい。


 筆者の中でも、表紙が青くドラゴンが描かれていたのが本当に事実なのかどうかすら定かでないという側面もある。


 一応、その本を当時、読んでみようと試みた記憶はある。


 たしか、読んでいるうちに、どこかのページが汚れてしまい、そこをこすって紙が破損してしまい、それでその本を忌避きひするか捨てるかした記憶がある。


 筆者は物持ちの良い人間ではないので、その幻の本は当然にいま、手元にない。


 あの時、本。そういうものが、意外と読んだ本より記憶に残るなんてこともある。


 あの時、その本を読むべきだったのか?

 読んでいたら人生がもっと豊かになっていたのか?


 もしかしたら、あの本は、今も、筆者に読まれるために、どこかで待っているかもしれない・・・


 ・・・なーんていうのは、それこそファンタジー小説の導入だが、いつかそんな話を書いてみようか。


 読んだ本以上に本にも思い出はある。それだけ、書籍の文化というのは人々にを与えてくれるのだ。

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