机の上に自分達の分の料理を並べると、
割と狭いなと思った。
それはそうだ、多くても2人分しか作らないから。
「…そう言えば、これ聞いていいのかな」
「なんでしょうか」
「ご家族の方…って、いるのかな」
少し、気まずそうに聞いてくるリベルタに
私は普通に答えた。
「母も父もとっくに居ません。父方の祖母が
私の親代わりでしたが、2年前に亡くなりました」
「…そう。興味ないだろうけど、俺も親が
早くに亡くなったんだよね」
そこで、何故か彼は言い終わってしまった。
不思議に思って私は言う。
「…続けてどうぞ」
「あ、いいの?じゃあ話すけど…って言っても
よくある話、その日暮らしで、家もなくて。
悪いことはしたよ、そりゃ。
でも、なんでか俺だけ生贄にされたのが
すごーく腑に落ちなくてさ」
ずず…とスープを一口飲んだリベルタは、
その時のことを何故だか懐かしそうに
目を細め、笑った。
「拷問で殺されるのを分かってたのか、
牢屋にいた時、看守の一人…まぁ、
何と言うか冴えないおっさんがさ、
少しだけ優しくしてくれたんだ」
「俺は、嬉しかった」
「初めて人に優しくされたから」
「でも違った、あれはただの憐れみだったんだ」
そう言って大笑いしながら目元を手で覆い、
天を仰ぐ彼の姿は涙をこらえている様だった。
「けど、俺は君に出会えて初めて、初めて
生きててよかったなぁって思えたんだ。
君にとっちゃ、まぁ、ただの…」
「私が、貴方を殺さなかったのは」
少し、大きな声量で私は彼の言葉を遮った。
「貴方がただの人間の様に、見えたからです」
「ただ、何もかもやらずに諦めて、強がって。
そんな子どもじみた不愉快な態度、言動が
私の気に触っただけです」
「…興味がなかったんじゃないの?」
「ありませんよ、今もこれからも」
「…じゃあ、なんでそんな…期待させる様なこと、
言っちゃうのかなぁ」
こちらを見る、潤んできた金色の瞳を
私はじっと見つめ返す。
「別に自暴自棄になられてもいいです、けど
せめてやり遂げてからなりなさい。
…後、私を巻き込まないでほしいだけです」
「最後…まぁ分かったよ、口説くだけにしとく」
「何も分かってないでしょう、それは」
呆れすぎて、ため息しか出ない。
でも、リベルタはすっきりした様子だ。
私は言葉を選べない性格なので
これでどうにかなるならそれは、
彼が相当にちょろいだけだろう。
「…あ、スミ、デザートもありますよ。
いかがです?」
『たべる』
「えっ、デザート?なにそれ食べたい!」
「生憎ですが…貴方の分はありません。
本当に申し訳ありませんが」
「全く思ってないよね?まぁいいや、
明日も来るから覚悟しておいてね!」
「今後益々のご多忙が舞い込む事を
切に願っております」
「君は本当に酷いなぁ…!」
なんて言いながらも愉しそうに笑う彼は
やはりドMか何かなのではないのかと思った。