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第6話 口説き文句は熱烈ですね



そして帰った、と思ったら昨日宣言した通りに

リベルタは一週間に一度程、我が家に現れては

私を熱烈に口説く様になった。

それとお土産なのか貢ぎ物なのか分からないが、

彼は来る度に律儀に(恐らく)果物やかなり、

だいぶ高価そうな宝石などを押し付けられそうに

なりますが丁重にお断りさせて頂いている。

あぁでも、向こうの世界で役立ちそうな知識は

私の知り得る範囲で伝えた。

そのお礼として、は返すに返せないので…

一応空き部屋に厳重な鍵を付けて保管しておいている。


「と言うか、こっちには旅行しに来ないの?」

いつもの様に、リベルタは縁側でだらしなく

寝転がりながらむしゃむしゃと茶請けの

まんじゅうを口に入れた状態で聞いてきた。

「汚いですよ…旅行と言いましても、私としては

 家に居る方が安心するので」

「気分転換とか、人間ならしたくならない?」

「私は一般的な感性とは少し外れてますから」

休日は特に何もなければずっと家の中にいるし、

そもそも異世界転移なんて普通に生きていたら

起こりませんからね。

「そっか、残念…でも食べ物くらい

 食べてもよくない?」

「異世界の食べ物ですからね…」

「モンスターの肉は食べてたくせに?」

「あれ、言いましたっけ」

「あー、スミが食べたがってたんだよ。

 そうだ、ダンジョンは?」

名案を思いついた、様な顔をしてらっしゃるが。

「アレは帰る為の必要準備の様なもので、

 私は戦闘狂でもなんでもありませんから」

「それにしちゃ随分と慣れてたよね…」

思い出して情けなく震えているリベルタ…

が、ふと真面目な顔をして私の目元を触る。

「…出会った頃より綺麗になっていくよね、

 君は。誰かに言い寄られてたりしてない?

 嫌だったら言ってね、俺は何でもしてあげるから」

…何だか嫌なねっとり感を醸しながら、

私の手を握るリベルタ。

いきなり何を言い出すかと思えば…と

ため息を吐きたくなるのを少し我慢し、

私は考える。

…そう言えばやけに男性社員から食事に

誘われてはいたが…もしかして、あれが

言い寄られると言う状況だったのだろうかと

首を傾げ、答える。

「確かに、前より男性にも女性にも

 声をかけられる様にはなりましたが」

「ユカリはとても魅力的で優しい人だからね」

「どちらも違いますが…後、何故貴方が

 ドヤ顔をなさっているんですか」

得意げな顔で無駄に胸を張る彼に、

思わずため息が漏れてしまった。


『ごーはん』

それから特に他愛のない話で時間を潰していると、

スミがぽよんぽよんと跳ねて来ました。

「はいはい、今から作りま…あぁ、そうだ。

 今日は魚がないんでした」

役目ができた、と言わんばかりにリベルタは

飛び起きて、キラキラとした目で聞いてくる。

「魚なら俺が取ってきてあげようか!?

 海が近いなら何でも持ってこられるよ!」

「サーモンと言ったらついでにマグロも

 釣ってきそうな勢いですね、だめです」

「えぇ、どうして?俺は…」

「魚はそこまで捌けないので嫌なんですよ」

「あー、まぁそうか。じゃあ買ってくるよ」

「だめですね」

「それこそどうして!?」

「どうしてって貴方、顔だけはいいですから」

「ふーん…俺の顔って、綺麗?」

「まぁ…物珍しいでしょうね、髪は艶やかで

 サラサラしていそうで瞳は金色できらきらと

 輝いていて、けれどギラついてはいなくて

 背は高いし、身体つきも立派ですし

 目鼻立ちは人形の様に整っていますから

 さぞ観光客やら通行人に写真を撮られるでしょうね」

などと言ってしまい、見ると…リベルタは

目を白黒させながら、顔を真っ赤にしていた。

「うぇ、あ、う、うん…あ、ありがとう?」

しまった、少し、褒めすぎたかも知れない。

「まぁ中身がクソお子様なので台無しですがね」

「えへへっ…でも俺の顔が好き、って事でしょ?

 嬉しいなぁ…」

「…お幸せな花畑脳ですね」

「それはちょっとだけ傷付くなぁ…」

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