06
__君を好きでいることが誰かに反対させることを私は考えていなかった。
星海さんは理久くんに何かを告げて一緒に帰っていく。理久くんがこちらを向き頭を下げる。私は思わず手を振っていた。カフェオレを注文して湊さんに言われたことを考える。理久くんのことを私は知らなかったことが多かった。知っていることよりも余程。私は理久くんと過ごす中で理久くんのことを好きにはなったけれど、理久くんが人を好きになる感情を持つことがあるのか、それを一度でも考えただろうか。きっと、湊さんの言うことは正しいのだと思う。間違っていないくらいには。たとえばこの先好意を募らせたとして、理久くんにそれを伝えようとしただろうか。自分の中に芽生えた想いと向き合うことに夢中で考えてはいなかった気がする。だから考えよう。自分の想いと向き合い、理久くんのことを。これからの私と、多分理久くんの為に。
__私は理久くんへのことを好きになった日のこと、そして理久くんの言葉を思い出す。
___回想
だから、店長さんに付いていってその店員さんがAIだと聞かされたときは驚いた。それでも、好きになるだなんて思わなかったんだよ。理久くんのことを人間みたいだと呟いてそれに理久くんの想いを聞いたとき、何故か寂しいと感じた。そしてその寂しさが恋に変わった。AIと人間の恋が実ると思っていたわけではない。ただ好きになった気持ちはどうしようもなかった。それからもそれまでも私の気持ち以外に変わったことはなかった。けれど。それ以上もそれ以外なんていらなかった。覚悟とはなんなのだろう。好きになったから知りたいと思ったし、知りたいと思ってしまえば好きという気持ちを偽ることも出来なかった。理久くんを製作したという湊さんに話を聞きたいと思ったのもその気持ちからだったのに。私はあまりにも浅はかだった。理久くんのことをAIだということ以外、理解していなかったことを知った。人とはち 違うということも分かっていたのにその意味を分かってはいなかった。私の想いと理久くんがAIであること、それだけが叶わない理由だとしても、芽生えたこの気持ちにさよならを告げることなんて出来ない。それだけは今も変わらない。