四条は研究所の実験室のような場所で、ワイングラスを手に立っていた。部屋には三上
と二人きりだ。
「四条さん。もしかしたら、これでこの世とお別れになるかもしれません。そんな時に、
私が見送り役でいいんですか?」
四条は微笑んだ。
「僕が、もし、立ち会ってほしい人間がいるとしたら五家一本だけです。だから、いいん
だ。僕には自分の推測が間違っていない自信がある。この推理が間違いだったら、僕はた
だ死ぬだけになってしまう。でも、そうならない確証、いや過剰な自信というのかな、が
あります」
三上が覚悟を確かめるまでもなく、意気揚々と四条はワインを口に含み、飲み込んだ。
そのワインには、致死量の毒物が含まれている。
【つづく】