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■ しばしの別れ ■

 四条は研究所の実験室のような場所で、ワイングラスを手に立っていた。部屋には三上

と二人きりだ。

「四条さん。もしかしたら、これでこの世とお別れになるかもしれません。そんな時に、

私が見送り役でいいんですか?」

 四条は微笑んだ。

「僕が、もし、立ち会ってほしい人間がいるとしたら五家一本だけです。だから、いいん

だ。僕には自分の推測が間違っていない自信がある。この推理が間違いだったら、僕はた

だ死ぬだけになってしまう。でも、そうならない確証、いや過剰な自信というのかな、が

あります」

 三上が覚悟を確かめるまでもなく、意気揚々と四条はワインを口に含み、飲み込んだ。

そのワインには、致死量の毒物が含まれている。


【つづく】

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