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■ 余談 ■

 後部座席に四条竜之助と五家一本を乗せたセダンを、三上逸郎が運転していた。

 三上は「あんまり物騒な話は詮索しないことにします。あなたが五家一本を連れ出した

方法について」と予め言った。

 四条は、一九九九年に、二十名の女性と関係を持った。生まれてきた子供の半分は男の

子だ。四条は三上に頼んで自分の実母の情報を探った。会うのは無理だというが、御家属

から口封じで貰った大金のうち幾らかあげてもいい、といった。四条は二十名の女性に対

して、母から受け取った金を分配した。小石川正義は母に対して、息子を手放す代償とし

てはあまりに大きすぎるほどの額を渡していた。何と言っても小石川正義は「神」とも呼

ぶべきものを金で買ったのだ。そんなこと、どんなに金を出しても普通は出来ることではない。そして、室と三上に協力を請い、親子を「外地」に匿ってもらった。そもそも、女

性を集める手段からして、四条は御家属がやっているのをそっくりそのまままねた形だ。

四条は女性たちに対し、子供が成人したら、会いにくる、とだけ言った。女性たちは身

元も定かでない気の毒な生い立ちの者ばかりだったが、ほとんどは「外地」で暮らすこと

に何の躊躇いも示さなかった。

 そして、二〇一九年。一九九九年に出産された子供は二十歳になる。四条は、その中か

ら自分に(そして五家一本に)最も似ている男を選び、スポーツ刈りへと髪を切らせて……


【つづく】

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