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第7話 小っちゃい姉ちゃん



 ――翌朝


「んっ……」


 眠りについたのは夜中三時を回ってから。

 それでもいつものトレーニングの時間には目が覚めてしまう。


 身体も充実しており、ついさっき人間の限界を超えたかのような回数オナニーしたとは思えないほどのを見せていた。


 性欲旺盛な思春期真っ盛りとはいえ、あれだけ発散したのにまだ朝勃ちはハイマックス状態だという自分に呆れてしまう。



 性欲とは関係無い現象とはいえ、どうにかならんものか。


 顔を洗ってトレーニングウェアに着替え、日課の走り込みを始めた。


 夕べの性欲発散のための無茶なトレーニングなどなんのその。


 いつもより調子が良いくらいの充実感が身体の中を駆け巡っている。


 俺はいつもより長めのコースをとってペースアップしながら走り込みをした。


 それでも疲れは全く覚えることはなく、むしろ後から後から力が漲ってくるような感じさえしているではないか。


「はぁ、はぁ、はぁ……ふしゅぅう……ふぅ。浮かれてるのかな、俺。……全然疲れないや、どうなってんだ?」


 走り込みが終わり、息を整えながらそんな事を独りごちる。


 体力には自信があるが、ここまでではなかったぞ?



 シャワーで汗を流し、浴室の扉を開けたところで家族と出くわした。


「おい順平ッ」

「え? ッア痛えッ!?」


 突如として膝の裏に衝撃が走る。

 強烈な膝かっくんをされた俺はバランスを崩しそうになるのをなんとか抑えて攻撃の主に目を向けた。


 犯人は分かっている。姉ちゃんだ。


「お、おはよう姉ちゃん。今日は早いね」


 俺の視線の遙か下。

 身長が190センチの俺に対して139センチしかない俺より年上の女性がそこに仁王立ちしていた。



「なーーーーーーーーーーーーにが"おはようねーちゃん今日も可愛いね♡"だっ!」


 ズゴシッ!!


「言ってねぼぉあっ!?」


 褒め言葉をねつ造しながら俺の腹に打ち上げのスマッシュパンチを叩き込む姉。


 さすがに不意打ちで水月(※みぞおち)に攻撃を叩き込まれるとどれだけ鍛え込んでもダメージは免れない。


 加えて姉ちゃんは強い。めちゃくちゃ強いッ。


 俺は高校の空手部に加えて近所にある古武術の道場にも通っているが、姉ちゃんはそこでトップクラスの実力を誇る猛者もさである(師範を除く)。


 こんなクソチビのくせに攻撃はやたら重いし、小っちゃいから攻撃が当たらないし、動きも速い。


「真夜中にシコシコシコシコシコシコシコシコ抜きまくりやがってっ! おかげでこっちは寝不足だぞっ。ものには限度ってもんがあんだろーがっ」


「き、気が付いてたの?」


「あたりめーだボケ。妙にウキウキしやがって。なんかあったなさては?」


 腹を押さえてうずくまってしまった俺は、姉を見上げながら許しを請う。


 あ、縞パン見えた。


「どこ見てんだスケベッ」

「ごぼふっ」


 後頭部を踏まれた。姉のパンツなんぞ見ても嬉しかないわ……。


「ご、ごめんねーちゃん。もうしないから許して……」


「別にするなとは言わねぇよ。お前も思春期だし、アタシもオナニーくらいするっての。だけど限度と隣人の迷惑を考えて気を遣えってことだよ」


 実の姉のオナニー事情なんぞ知りたくもないわけだが、言ったらまた殴られるので素直に頷いておく。


「おらっ、朝飯の時間だぞ。そんなところにうずくまってないでサッサと降りてこい」


 誰のせいだ誰のッ。


 悪態を突きたい気分であるが力の差は歴然なので弱者は素直に従っておく。



「おはよう母ちゃん……」


 朝飯を準備してくれる母ちゃんに挨拶し、リビングの端っこにちょこんと鎮座する小さな仏壇に手を合わせた。


 父の遺影が爽やかな笑顔を浮かべており、いつものように朝の挨拶を心の中で行う。


「じゅんぺぇ~~~おはようぅ~~~(ニヤニヤ)」


「あんだよ、気色悪い笑顔浮かべて……」


 父ちゃんへの挨拶を終えて席に着く。


 何故だか母親がと~~~ても嫌な笑顔を浮かべながら朝飯のスクランブルエッグの乗った皿を俺の前に持ってくる。


「いやぁ、昨晩はお楽しみでしたねぇ。一人で☆」

「ぬぐっ!? げほっ、げほっ、な、なんの話だっ!?」


「若いからってヤリすぎると禿げるよ。まああんたは父ちゃんに似て絶倫の遺伝子持ってるだろうから心配してないけどぉ」


「だーから言ったのにぃ」

「さては姉ちゃんだなバラしたのはッ!!」

「んなわけあるか。あんだけ激しくやってたら誰でも気付くわ」


 てっきり姉が母ちゃんに告げ口したのかと思いきや、俺の激しいオナニーは家族中に知れ渡っていた事が判明し、俺の精神は無事に死亡した。


 こうして樋口家の朝模様は、俺、母、姉の三人で食卓を囲むところから始まる。


「ところでじゅんぺー♡」

「あんだよ……」


 そんないつもと変わらない日常の一コマで、俺は母親から信じられない言葉を聞くことになる。


「あんた今日から『希良里きらりちゃんの家で暮らす』ことになったから♪」


「はあっ!?」


 まさかの提案再びであった。


――――――――――


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