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第9話 新たな生活


 さて、学校での俺達の生活も一部紹介したいところだが、今日は特筆すべきこともそんなにないので端折って簡単に説明するとしよう。


 俺達三年生の学校生活はもうほとんど消化試合みたいなものだ。


 俺は推薦で進学が決まっているので受験勉強とも無縁となっている。


 一応空手による推薦の話もあったりしたが、俺にとっての肉体強化は二人を守るためであって空手そのものに執着はない。


 高校卒業後は姉ちゃんと同じ古武術の道場一本に絞ろうと思っている。


 だから普通に就職という道も考えたが母によって反対されている。


 学生生活を謳歌せよと言うのが母の言葉であり、自身が学生時代に大学を中退してしまった過去に理由が起因しているらしい。


 まあ経済的な支援もしてくれるらしいのでありがたくそれを享受していこうと思っている。


 高卒よりも大卒の方が就職の選択肢も増えるだろうし、人生経験という意味で進学を選択しているのだ。


 そして推薦によって決まった大学受験も既に合否の発表が為されており、俺は残りの高校生活を既に消化試合の時期に入っているというわけだ。


 そんな高校三年生の授業は1月の現在は短縮形式となっており午前中で終わってしまう。


 そして2月に入るともう授業そのものが終わり学校へ行くこともなくなるのだ。



 俺は大学が始まるまでの数ヶ月を鈍らせないために道場に通い、有紗ありさ希良里きらりの授業が終わる時間に合わせて迎えにいくことにしている。


「あ、兄ちゃん」

「どうした希良里きらり

「うん。三年生の授業早く終わるよね。これ、ウチの鍵だからお迎えの時間まで荷物運びに入ってて」

「いいのか?」


「うん。兄ちゃんなら信頼できるから。お腹空いたら戸棚のおやつ食べて良いからね。兄ちゃんのお部屋には札が掛けてあるから」

「分かった。ありがとう希良里きらり


 断る理由もないので有り難く鍵を受け取ることにした。


 掃除でもして待っているとしよう。


「にーちゃん、希良里きらりの部屋に忍び込んで下着とか漁ったりしないでねぇ」

「え、兄ちゃん……」


「誰がするかっ!!」


 ニヤニヤからかう有紗ありさの言葉に心配そうに見つめる希良里きらり

 心配するな希良里きらり。俺はそんな変態行為をする度胸はない。




 ――そして午後。


 希良里きらりから預かった鍵で家の中に入り、自分の着替えや生活道具を運び入れておく。


 俺にあてがわれた部屋は十分に広く、むしろ自室よりも広いくらいだ。


 空き部屋にはベッドや机が準備されており、俺がここに来ることはかなり以前から想定されていた事が分かる。


「姉ちゃんがグルだったに違いないな」


 なんだったらむしろ母すら一枚噛んでる可能性もある。

 いや確実に一枚どころか一緒になって画策しているのは明白だった。




 そして部屋の掃除と荷物の運び入れも終わり、二人を学校まで迎えに行って夕食の材料の買い出しにスーパーへと赴いた。


 ここら辺は特筆すべきイベントもなかったので割愛しよう。



 重要なのはここからだ。



 俺は全ての準備を終わらせて今日から暮らすことになる自室で夜のトレーニングに勤しんでいた。


 ちなみに変な意味ではない。今日から女の子と一緒に暮らす訳から自家発電なんて恥じらい行為をするわけには行かないから律していかないとな。


「兄ちゃん、お風呂入っちゃってくれる?」


「ああ、分かった」


 扉越しに希良里きらりの声でお風呂が空いたことを知らせてくれる。


 俺はトレーニングを終わらせて汗を拭きながら風呂場へと向かう。



「バスタオルは棚の所だから」


「ありがとう希良里きらり


 扉を閉め、衣服を脱いでバスルームの内扉を開くと、広くてデカいバスタブのある風呂場が目に入る。


「おお……さすがはセレブの家。風呂も広いなぁ」


 小さい頃に一緒に入った時はだいたい俺の家だったし、希良里きらりの家も今ほど大きくはなかったからな。


 初めて入ったが凄い広さだ。

 三人一緒に入っても問題ないくらいに……。


「いやいや、何を考えているんだ俺は……バカな妄想をするな」


 かけ湯をして湯船に浸かり、バカな考えを振り払う。


 しかし、ここでいつも裸の希良里きらりが入浴しているのだと思うと妙に落ち着かなくなってしまう。


 イカンイカン。また勃起してしまいそうになる。

 こんなんで三人暮らしなんてできる筈もない。


 だいたいあり得ないんだよなぁ。年頃の女子高生と思春期真っ只中の性欲猿男子を同じ家に放り込んで暮らされるなんて普通に頭がおかしい。


「にーちゃーんっ、湯加減どうかなぁー?」


 扉の向こうから有紗ありさの声がする。

 妄想を振り払って意識を現実に引き戻す。


「何か足りないものない?」


「ああ、大丈夫だぞー」


 何故か希良里きらりの声までする。なんで二人してお風呂場に来ているだろうか。


 家の中じゃ常に一緒に行動とか? さすがはカップルと言うべきなのだろうか。




 ――と、そこまで考えたところで、あまりにも予想外の事が起こる。


 ガララララ――


「え?」


「じゃじゃーん。にーちゃん、お背中おながししまーすっ」

「私達もご一緒するね」


「ほあっ!?」


 あろうことかバスタオルを巻いた有紗ありさ希良里きらりがお風呂場に乱入してくるではないか。


 俺は慌てて目を逸らして湯船に肩を沈める。

 こんなところで二人のヌードなんて見てしまったら勃起不可避だ。


 同居1日目にしてそんな痴態を晒すわけにはいかん。


「な、ななな何をやっている二人ともッ! 入るなら俺は出るからッ、もう少し待っててくれッ」


「遠慮しなくていいじゃん。昨日おっぱい見たんだし」


「それとこれとは別だっ」


「兄ちゃん、嫌だった?」


 嫌な訳がないっ。むしろ嬉しい。嬉しいがそうじゃなくて。


「いやいや、俺は竿役だから欲望まっしぐらになってはいかんぞ。二人の裸なんてみたら理性保てる自信が無いって」


 俺はハッキリと二人を女性として意識していることを伝えて危険な行為であると分かってもらうことにする。


 だが返ってきた答えは――。


「大丈夫だよにーちゃん♡」

「こっち、見て♡」


「え?」


 やはり性的な好奇心には逆らえず、恐る恐る逸らしていた視線を戻す。


「み、水着?」


 そこには肌色成分たっぷりのビキニ水着を着用した二人が恥ずかしそうにはにかんで立っていた。


 いやっ、これも十分危険ですってっ!!



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