『ねえ
『ん? どういう意味? 好きだよ♪』
『友達として?』
『……それ以外に何かある、の?』
『それ以上って……、有紗ちゃんはなれる?』
『え、そ、それって……どういうこと?』
中学一年生の時。それは世間的に女の子は男の子よりも精神の成熟が早いと言われる、そんな時期。
『私達、2人とも好きな人、いるよね?』
『うん、いる。誰にも譲りたくないくらい、好きな人』
『そう、それはお互いに想いは一緒』
きっかけは、俺が中学の空手部の大会で優勝したこと。
俺は先輩後輩、そして大人に関わらず女子に持て囃されるようになった。
コクリと頷く
『私、にーちゃんの事が好き……恋人になりたい。結婚して子供を産みたい。だけど……それは
『そう、私も一緒。兄ちゃんと結婚したい。子供を産みたい……。でも、
二人にとって俺は男性の全てだったらしい。
人間の心なんて変わっていくものだから、二人が人生経験を重ねればそんな思いだって霧散するものだろう。
だけど二人はそうしなかった。徹底的に俺を好きであり続けた。
徹底的に俺以外の選択肢を自分達の中から消していった。
あらゆる可能性を、自分達なりに考えた末に、今のような状況を作り上げるための結論を導き出したらしい。
つまり、二人で兄ちゃんと結ばれるにはどうするか、ということだ。
『じゃあどうするの? 日本は、お嫁さん一人だけだよ』
『そんなの結婚しなきゃ良いんだよ。今の時代、戸籍を一緒にするのが絆なんて考えは古いし、所詮紙切れ一枚の話だもん』
ドライというか割切っているというか、合理的な考えの
『それにね、日本でもハーレムやってる有名な企業の会長さんいるよ』
『ああ、前にテレビに出てた人?』
日本有数の企業、水無月コーポレーションの引退した会長が、ハーレムを形成して大きな邸宅に多くの女性達と暮らしているのは有名な話だ。
俺も本で読んだことがあるけど、中々にぶっ飛んだ人生を歩んでいる人らしい。
離婚した話から、会社の部下だった15歳も年下の女性と恋に落ちたり、お隣さんの未亡人と一緒に愛し合ったりと、なかなかにファンタジーな話のオンパレードだった。
でも実際にその人は実在しているし、テレビにも出演してそういう話を臆面もなく話している。
ネットじゃ叩いてるヤツもいるけど、俺は何故か本当のことだって信じてたな。
自分がそうなるとは
『でも、すっごいお金持ちなんでしょ? そうじゃなきゃ無理じゃない?』
『それなら気にしなきゃいいんだよ。世間の評価なんて関係ない。経済力なら大丈夫。私がなんとかする』
『さすが
『そう。大事なのは心同士で思い合っているかだよ……、なんて、前置きはいいよね。私はね、兄ちゃんが好き。
『うん。私はにーちゃんが好き。一緒に暮らしたい。にーちゃんの赤ちゃん絶対産みたい』
『じゃあ、どっちが恋人になれるか、勝負する?』
『やだ。希良里に勝てる気しないもん』
『私も一緒』
『じゃあどうするの? 2人一緒に恋人にして~って迫っちゃう?』
『兄ちゃんは真面目だから、きっと無理だと思う。常識がとか、倫理的にとか、色々思い悩んじゃうよ』
『うーんそっか。じゃあ何か良い方法ないかな?』
『だからね、私達が、先に恋人になっておくの』
『えっ、ど、どういうこと?』
『だから、百合になっておくの。そうすれば』
『あ、そっか。どっちかしか選べなくても、カップルになっておけば』
『そう、私達は別れたくないから、2人一緒に愛してって、言いやすくなる』
そして、2人の意識はシンクロした。
ではどうするか? 兄ちゃん、にーちゃん……つまり俺は、どうしたら二人を恋人にするという選択肢を、否応なく受け入れてくれるのか……。
いや、『受け入れざるを得なくなるか』。二人はそのように考えた。
ませていた、というよりは……、一つのことに徹底した考え方を持っていた二人は俺が絶対に言い逃れできず、受け入れざるを得ない既成事実を作り上げる準備を始める。
自分達がどうしようもなくほっとけないくらい『良い女』になること。
二人は可愛い。徹底した女の魅力と、少女らしい可愛らしさを兼ね備えた美少女という概念をそのまま体現したかのような存在。
女子小学生が愛読する雑誌の読者モデルに応募し、当然のように二人とも採用。
親を説得して動画配信者となり、自ら流行を作り出す存在となった。
今や下手な大人より多額の収入を得て確定申告までしているほどだ。
「それで、私達はまず女同士で恋人になった」
『兄ちゃん、最近すごくモテるようになったよね。空手の大会で優勝してから』
『うん。みんなにーちゃんの魅力に気が付き始めてる』
『このまま手をこまねいていて、良いと思う? 他の女に兄ちゃんが盗られちゃうのを、黙って見過ごせる?』
『そんなの、絶対ヤダ……にーちゃんが知らない女の人とくっ付くところなんて、見たくない』
『そう。私達、強力なライバルがいるもんね』
『そう。私達どっちかだけだと【あの人】には絶対に勝てない』
――――――
「あの人って?」
「まだ内緒♡」
「また今度教えるね♡」
2人の中では絶対に敵わないと思っている女性がいるのか?
俺の知ってる人だろうか?
「それより、続きね」
「お、おう」
――――――
一人ずつでは絶対に勝てない人がいる。
ではどうするのがベストか?
二人が出した答えは……。
『二人とも兄ちゃんの彼女になればいい』
『そうだね。そうであるなら、もしもにーちゃんがどっちかと結婚したいって言っても、実は二人は付き合ってるから、受け入れてあげてって交渉材料にもなるよね』
初めの頃は、そんな計算があったらしい。
それがそのうち、どっちも手放したくないと思えるほど魅力的になろう……。
そういう結論へと変わっていき……。
『だったら、私達が百合になって挟んでしまおう!』
どれだけ自分を磨こうとも、一人の力ではいずれ自分達以上の魅力を持った女に盗られるかもしれない。
では二人ならどうか? 魅力的な女が二人で迫ったら、そしてその二人が既にカップルで、お互い離れたくないけど俺のことが好きだから、二人とも恋人にして~と迫ったらどうだろうか。
単純な女二人ではなく、『百合』という属性を持った二人に迫られたら。
そう考えた結果、二人の利害は一致した。
つまるところ、最初の二人は利害の一致によるビジネスカップルという側面が強かったというわけだ。
そして中学2年生の時、二人は初めてエッチをした。
「あ、にーちゃん反応した♡」
「私達の初エッチ、聞きたい?」
俺は答えられなかった……。
めちゃくちゃ聞きたい。これが男との初体験だったら嫉妬に狂っていただろうが、百合同士の初体験。
しかも、『俺とエッチするまでは』と、処女膜もファーストキスすらも守り通してきた二人のエッチの様子は、俺の知的好奇心と新しい性癖を刺激するには十分だった。
「だっていざ3人でエッチするときにさ、ご奉仕できた方がにーちゃん喜ぶと思って」
だから女同士も慣れておこう。最初はそのような考え方から、女同士でお試しエッチを始めた。
そして、大人のおもちゃを練習台にして、お風呂場で見せてくれたご奉仕のあれこれを練習しまくった。
そのうち好奇心が出てきて、2人は本当の百合カップルになっていったのである。
「つまり、性感帯の開発とか、奉仕の練習とかが高じてお互いを求め合っていくうちに、本当のカップルになったってことか」
「うん。本当はね、もっと早く告白するつもりだったんだ」
「なにか別の理由があったのか?」
「うん。ちょっとね。でもこれは、まだ内緒」
「え~。まだ何か秘密があるのか?」
「うん。これは、もうちょっと時間をちょうだい。でも、兄ちゃんに絶対悪い未来は来ないから安心して」
「ふーむ。なるほどな。分かった……ところで、話に出てきた【あの人】って誰の事だ? 内緒の部分って、もしかしてその人が関係してるのか?」
「ん~、まあね。だから内緒♡ それより、兄ちゃん」
「もっかいしようよ♡ こんどは(こにょこにょ♡)」
魅惑的なプレイを耳打ちしてくる有紗達。
純粋に、あらゆる手段を使って俺を囲い込もうとした結果、性別を超えたカップルになってまで徹底してくれた2人の誘惑の言葉に乗せられ、俺はまだ秘密にしたいという2人の言葉を尊重することにした。
それは『有紗と希良里が百合で挟む……だけじゃない』ことを示していたのだが、この意味を知るのはもっと後の事になる。
――――――――――
※後書き※
なんか「2人が先にエッチしていた」の部分も人によってはBSSに見えるらしい。
徹底したユニコーンさん仕様じゃないと許容出来ない人はごめんにょ。
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